【松本】クラブ通算100試合出場のセルジーニョが語る「山雅愛」。「幽☆遊☆白書を観て…」来日理由も吐露

2020年11月16日 大枝 令

加入当時、反町監督は「セルジは賢いし、サッカーを分かっている」と評価

松本加入4年目で、100試合出場も達成したセルジーニョ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 下位に苦しみ、1年でのJ1返り咲きを逃した松本山雅FC。それでも、ファイティングポーズを取ることはやめない。「今年は本当にいろんなことがあった。それでも踏ん張って陰ながら支えてくれたサポーターのために、残り試合は気持ちを入れて戦う」。そう語っていたのはセルジーニョだ。加入4年目の今季、松本だけでリーグ戦通算100試合出場の節目を迎えた。

「どんな選手でも、特に外国籍選手で100試合プレーするのは並大抵のことではない。非常にうれしく思っているし、自分にとっては勲章とも言える出来事」とうなずく。節目となった32節・アビスパ福岡戦も先発して84分までプレーし、攻撃を力強く牽引。続く33節・ジェフユナイテッド千葉戦のキックオフ前にセレモニーが行なわれ、夫人と愛息とともに記念写真に収まった。

 さらに、その試合では今季初の2ゴールと大きな存在感を放った。ペナルティエリア外でCKのこぼれ球を待ち受け、抑えの効いたミドルで鮮やかな先制弾。後半には一時同点とするPKも決めた。確かなボールスキルを持つ前貴之と佐藤和弘がシーズン途中に加入したのに伴い、ボールを受けに下りてくる頻度も激減。「できればゴール前でゴールを狙ってプレーしたいので、今は非常にやりやすい」と納得の表情を浮かべる。

 充実の時期を過ごす29歳の小柄なブラジル人アタッカー。松本への移籍は大きなチャレンジだった。15年は初の国外移籍でカザフスタンのFCカイラトに所属。ブラジル2部のセアラーでプレーした16年を経て、松本からのオファーに即応した。そもそも幼少時にアニメ「幽☆遊☆白書」を観て以来日本に興味を抱いており、念願叶っての来日。加入当時は「特にサポーターが素晴らしいというのが第一印象。早く来たくてワクワクしていた」と述懐していた。
 
 加入直後から持ち前のサッカーインテリジェンスを発揮し、新天地に適応した。当時の反町康治監督から「セルジは賢いし、サッカーを分かっている」との評価を受け、開幕戦から先発に定着。軽やかなドリブルで相手DFをはがしたり、間接視野の隅に捉えた味方へトリッキーなパスを出したりと攻撃を活性化させた。1年目は27試合・3ゴール。チームはJ1昇格プレーオフを逃したものの、異国の地で一定の存在感を示した。

 J2制覇を果たした2年目の18年は、さらにその輝きを増す。33試合でチーム最多の11ゴール。この時点ですでにチームの中心となっており、優勝を決めた試合後は「山雅の歴史に名を刻むことができて光栄だし、キャリアの中で1番うれしいタイトル。(加入)1年目の新体制発表会で『山雅の歴史に名を刻む』とサポーターの前で言って、それを有言実行できて満足している」と喜びを爆発させた。

 J1の昨季は悩ましい時期も過ごしたが、今季に記念すべき節目を迎えた。初来日した外国籍選手が松本だけで100試合に到達したのは初の例で、その意味でも「クラブの歴史に名を刻んだ」と胸を張って言えるだろう。今季の松本は34試合を終えて9勝12分13敗(勝ち点39)の19位と不本意なシーズンを送っているものの、最後まで戦うのをやめないのはセルジーニョも同じだ。

「自分のサッカーを見せられる機会を与えてくれたのが松本山雅であり、この街。この4年間でいろいろなことがあったが、常に自分を見守ってくれたクラブには感謝の気持ちしかない。サポーターは僕に対しても家族に対しても温かく、特別な存在。それもうれしいし、松本に残る大きな要素になっている」

 この4年間で確かな足跡を残してきたセルジーニョ。サポーターとの絆を育みながら、シーズン残り8試合も松本を牽引していく。

取材・文●大枝令(スポーツライター)

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