心に響いた中村憲剛の金言。町田の岡田優希を支えているアドバイスとは?

2020年11月06日 郡司 聡

「できることをすべてやった方だなとリスペクトしています」(岡田)

川崎アカデミー出身で、早稲田大時代にも中村(右)と接点があった町田の岡田(左)は、川崎のバンディエラから影響を受けていた。(C)SOCCER DIGEST

 11月1日に今季限りでの現役引退を発表した中村憲剛の言動や振る舞いは、他クラブの選手にも好影響を与えている。4日のJ2第31節・長崎戦でゴールを決めた町田の岡田優希も、中村の言動に刺激を受けたひとりだ。

 プロ2点目となった長崎戦のゴールは、2点ビハインドの75分。佐野海舟がヘディングでクリアしたボールを髙江麗央が回収。髙江は岡田とのパス交換を経て、前方のスペースを突く橋村龍ジョセフに向けてスルーパスを供給したが、長崎DFの吉岡雅和にスライディングで阻まれると、クリアボールが岡田の下に転がってきた。岡田はそのままダイレクトで右足を一閃。低弾道のシュートは、横飛びでセーブしようとした相手GKの高木和徹の手をはじき、ゴールに吸い込まれた。

「ボールがこぼれてきたので、シュートを打ったとしか言いようがないというか……。ゴールに近づくプレーをすべきだと思っていましたし、そうした姿勢があのゴールを引き出したと思います」

 迷いなくダイレクトプレーを選択したことが、貴重な追撃のゴールにつながった。
 
 本人にとっては、前節・愛媛戦の手応えを結果につなげた格好だ。チームが1−2で敗れた愛媛戦は5試合ぶりに先発出場。両チーム最多となる4本のシュートを放ち、相手ゴールに迫るシーンを作ったが、得点ならず。それでも、愛媛戦翌日の岡田は自身のプレー内容をポジティブに捉えていた。

「途中出場の試合でも、なかなかそこまでいくシーンを作れていなかったので、決定的なシュートの形まで表現できたことはポジティブな材料だと思います」

 ゴールに近づく感触がある中で、ようやく決め切った長崎戦の得点だった。
 
 奇しくも、愛媛戦当日の試合前、川崎のアカデミー時代にその背中を見てきた大先輩の中村が今季限りでの現役引退を発表した。川崎U-18時代や早稲田大在学中、トップチームのキャンプに参加した経験を踏まえ、「いつかはこの人からのパスを受けたい」と願ってきたが、どうやらそれは叶いそうにない。

「僕がこんなことを言うのはおこがましいですが、まだまだ現役を続けるだろうなというイメージもあったので、決断は寂しいです。でも、現役の締め方がかっこいいなと思いました。決して強くない時期からひとつのクラブに在籍し続けて、クラブを強くし、タイトルを獲れない時期も超えて優勝して、フロンターレを常にタイトル争いができるクラブにして、下の世代も育てています。ひとつのキャリアの中で、できることをすべてやった方だなとリスペクトしています」

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