連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】ACLで大苦戦 「球際に弱い」日本サッカーのなぜ

2015年03月19日 熊崎敬

普及の成果が勝利には結びついていない。

三冠王者のG大阪が3試合を終えて未勝利。日本勢が大苦戦を続けるACLから何が見えるのか。 (C) Getty Images

 ACLグループステージは3節を消化して、日本勢3チームが敗退の危機に立たされている。2勝1分けの柏を除けば、浦和と鹿島が3戦全敗、G大阪が1分け2敗と勝利から見放されている。
 
 ACLでの不振に加え、代表チームもアジアで勝てなくなった。A代表はブラジル・ワールドカップで1分け2敗と惨敗し、アジアカップはベスト8止まり。U-20ワールドカップは4大会連続で出場を逃している。加えてU-17ワールドカップも、連続出場が5回で止まった。日本サッカー界は明らかに弱体化している。
 
 ACLのテレビ中継で、このところ頻繁に耳にするフレーズがある。それは「球際に弱い」だ。
 たしかに日本人は球際に弱い。足先だけでプレーして、簡単に体を入れ替えられるシーンを目にする。
 
 こうしたシーンを見て「球際に負けるな」、「戦え」と要求したところで、一朝一夕には治らないものだ。
 Jリーガーが球際に弱いのは、幼いころに球際に弱いプレーしかしてこなかったからだ。誤った習慣を正そうと思ったら、幼いころから正しいプレーを身につけるしかない。
 
 結果が出ていないとはいえ、サッカーの普及という点で見れば日本はアジアでもトップだろう。これだけ多くの少年少女が恵まれた環境でサッカーに励んでいる国はない。
 韓国や中国に比べれば裾野は間違いなく広大だ。中国は人口こそ多いが、「足球(中国語でサッカー)は不良のやるもの」というイメージが強く、親から敬遠される傾向にある。
 
 裾野が広がれば当然、山の頂点は高くなる。ブラジルが世界最多5度のワールドカップ優勝を果たしているのは、世界一広い裾野を持っているからだ。
 だが、日本は普及の成果が勝利には結びついていない。なぜか。
 
 これはひと言でいえば、「教育」が間違っているという他ない。
 日本サッカー界は普及には成功したが、普及することで、本来遊びであるはずのサッカーを大人が過度に管理するようになってしまった。その結果、サッカーをすることが塾の延長のようになっている。
 こうした論理優先の環境では、子どもたちは本来持っているはずの闘争心を爆発させることはできない。もちろん、サッカーの本質である戦いを身につけることなどできない。

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