【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「スタジアム建設、株式譲渡……ミラン再建プロジェクトの現状」

2015年03月18日 マルコ・パソット

ベルルスコーニの“虫の良すぎる”希望が叶うかもしれない!?

ベルルスコーニ・オーナーの下で実権を握るガッリアーニ(左)とバルバラ(右)の両副会長。アジア資本の投下が実現した場合、クラブ内の権力の構図はどのような変化を見せるか。 (C) Getty Images

 今、ミランは非常に重要な戦いに向けて準備をしている。といっても、試合のことではない。チームの未来を懸けた、組織としての戦いだ。
 
 数年前より、シルビオ・ベルルスコーニ・オーナーはある運営方針を公の場で何度も繰り返し口にしてきている。それは、チームの財政を豊かにするために投資家を呼び込むということ。しかし繰り返している割に、その目論見は成功していない。それは、方針に根本的な問題があるからだ。
 
 ベルルスコーニ・オーナーが望んでいる投資家とは、自身の持ち株より少ない株を保有してくれる人物である。つまり、金だけ出してもらい、チームの経営権は自分が握り続けたいのだ。果たして、そんな都合のいい話に乗る者はこれまで見つかることはなかった。
 
 ところが、状況は最近になって変わってきた。ミランが、自前の新スタジアム建設を発表したからだ。すでに、4万8千人のキャパシティーを有する最新鋭のスタジアムを街の中心地に建設するといった、概要も明らかにされている(実現までにクリアすべき問題も多く、建設予定は2018年とまだ先のことだが)。
 
 これにより、投資家たちのミランの見方は変わった。自前のスタジアムを持つことは、今や欧州で戦い抜くための必須事項であるだけでなく、クラブに大きな利益を保証するものでもあるからだ。ユベントスを見れば、それはよく分かる。
 
 この新スタジアム建設という大プロジェクトを直接指揮するのは、ベルルスコーニ・オーナーの次女であるバルバラ・ベルルスコーニ。彼女はミランの副会長であり、取締役であり、マーケティング部門の責任者でもある。
 
 オーナーが実の娘にミランでの重要なポストを与えたということは、ベルルスコーニ・ファミリーが今後もミランの経営に携わっていくという意思表示でもある。つまりベルルスコーニ・オーナーは、ことあるごとに主張しているように、決してミランの筆頭株主の座を譲ろうとは思ってはいないということだ。
 
 ミランは、彼にとって常に大きな情熱の源なのである(もちろん政治の次に、だが)。
 
 とはいえ、今後もその考えが不変であるかは分からない。ミランの経営権については、これから4、5年先に株主として最もクラブの財政を潤すことのできた者が、将来的に筆頭株主の座を譲られるのではないだろうかというのが大方の見方だ。これこそが、新しい投資家がミランを手に入れる唯一の道なのである。
 
 ここ数か月、多くの人間がミランに近づいてきた。その国籍は様々だ。アメリカ、中東、アジア……。そのなかで今、2つの可能性があるといわれている。
 
 ひとつは、財力の面からも、タイミングからも最有力とされている、中国の不動産グループ「ワンダ」。何千というホテルや映画館などを経営し、いまなお拡張し続けている。社長の王健林氏の総資産は中国で2番目といわれており、つい先日もスイスのスポーツマーケティング会社「インフロント・メディア」を買収している。
 
 このワンダグループとのコネクションができれば、ミランはマーケティングとスポンサーの面で一挙に飛躍することができる。また、元々は不動産業から発した企業であるから、ミランの新スタジアム建設でも大きな力となるだろう。
 
 
 
 

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