【CLポイント解説】攻撃は単調で個の力も不十分…「3点目」が遠かったアーセナル

2015年03月18日 片野道郎

堅守にすべてを賭けてリードを守り切ったモナコ。

1)またも偉業に届かなかったアーセナル
 
 ホームでの第1レグを1-3で落とし、勝ち上がりのためには最低でも3得点が必要だったアーセナル。完全に守り倒しに入ったモナコに対して一方的な攻勢に立ち、残り10分となったところで2点目を挙げて偉業にあと一歩まで迫ったが、最後の1点を奪うことができなかった。
 
 この2試合の得点経過(1-3/2-0)は、その後優勝することになるバイエルンをギリギリまで追いつめた12-13シーズンのラウンド・オブ16とまったく同じ。CL史上、ホームの第1レグで2点差負けを喫してそれを逆転した例は一度もないのだが、2年前と同様、アーセナルはその前例を覆す寸前で力尽きた。
 
 これでCLは5シーズン連続のベスト16敗退。とくに今回は、2点のリードを許した第1レグの終了間際に1点を挙げながら、その後ロスタイムに決定的な3点目を許すという大失態が結局致命傷となった形。この詰めの甘さはもはやこのクラブの伝統とすら言える域に達しているが……。
 
2)若さを露呈したものの「貯金」が物を言ったモナコ
 
 一方のモナコは、第1レグで手に入れた圧倒的な優位を活かし、元々の大きな強みである組織的な堅守にすべてを賭けてリードを守り切った格好だ。
 
 とはいえ、最初からそうした振る舞いを選んだわけではなかった。試合の立ち上がりは、第1レグ同様にコンパクトな4-4-1-1(4-2-3-1)を高い位置まで押し上げてのハイプレスを敢行、敵陣のボール奪取からカウンターに転じる場面が最初の10分間で3回もあった。
 
 しかし、10分過ぎにアーセナルがやっとボールを落ち着かせてポゼッションで押し込み、それに対応してリトリートして以降、最終ラインが自陣ペナルティエリアから10メートル以上の高さに押し上げられることは一度もなかった。
 
 3点奪われなければ勝てるという状況で、心理的に守りに入らず攻守のバランス感覚を保って戦うのは簡単ではない。経験の浅いU-23世代がフィールドプレーヤーの半分(最終ラインの4分の3)を占める若いチームならなおさらである。
 
 結局、残りの80分間は自陣ですらプレッシングを放棄、エリアの直前(しばしばエリア内)まで最終ラインを下げ、その前を5人のMFがプロテクトするという専守防衛(イタリアではよく「ゴールの前にバスを横付けにする」という言い方をする)で第1レグの「貯金」を守り切った。
 
3)ウイングの左右入れ替えで停滞局面を打開
 
 開始10分過ぎから一方的な攻勢に立ったアーセナルは、右ウイングのA・サンチェス、トップ下のエジルが相手2ライン(MFとDF)間でパスを受け、そこから細かいコンビネーションで中央突破を試みては撥ね返されるという繰り返しで、シュートチャンスを作ることすらままならない。
 
 SBの攻め上がりでサイドをえぐりクロスを折り返しても、中央ではジルーがアブデヌール&ワラスという屈強なCBペアに挟み込まれてボールに触らせてもらえない。
 
 この手詰まりの状況を切り開くきっかけとなったのは、30分にA・サンチェスを左、ウェルベックを右へとウイングのポジションを入れ替えたこと。ここから、アジリティに難があるモナコの右SBファビーニョにA・サンチェス、モンレアル、さらにエジルが絡んだコンビネーションやドリブルで揺さぶりをかけ、守備ブロックに綻びを作り出す場面が見え始める。
 
 そして36分、その左サイドからの攻撃で生まれた最終ラインのギャップにウェルベックがスルーパスを送り込み、裏に抜け出したジルーがシュート。これはGKスバシッチにブロックされたが、そのこぼれ球が運良く足下に転がり、ジルーがこれを押し込んで先制に成功する。
 
 アーセナルはその後も38分にウェルベック、ロスタイムの46分にジルーが決定機を得たが、いずれもアブデヌールにブロックされて得点にはつながらず、1-0で前半を終えた。
 
 
 
 

次ページラムジー投入で中央突破に「偏る」の傾向もさらに強まり…。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事