モウリーニョは「スペシャルな男」ではなくなったのか?【チェルシー番記者】が考察

2015年03月17日 ダン・レビーン

「You are not special anymore!」の野次が。

FAカップとCLの早期敗退でモウリーニョに懐疑的な視線が。「スペシャル・ワン」は、もはやスペシャルではなくなってしまったのか。 (C) Getty Images

 ちょうど1年前のアストン・ビラ戦だ。ジョゼ・モウリーニョ率いるチェルシーは、2人の退場者を出して0-1で敗れた。終了直前には、レフェリーに暴言を浴びせたモウリーニョも退席処分を受け、盛り上がる地元のビラサポーターからはこんな野次が飛んだ。
 
「You are not special anymore!」
 
 お前(モウリーニョ)はもう"スペシャル"なんかじゃない――。たしかに、不甲斐ない敗北にそう思ったチェルシーファンも少なくなかった。
 
 あれから1年が経ち、モウリーニョはチェルシーを首位に導いている。29節を終えて2位マンチェスター・シティとは勝点6差。しかも消化試合はひとつ少ない。ブルーズ(チェルシーの愛称)がタイトルに最も近い存在であることは間違いなく、モウリーニョも"スペシャルネス"を取り戻したかに思えた。
 
 モウリーニョに再び懐疑的な視線が注がれはじめたのは、格下相手に不覚を取ったFAカップに続いて、チャンピオンズ・リーグでも早期敗退を喫したからだ。
 
 実質3部のブラッドフォードに苦杯をなめた(2-4)FAカップの4回戦敗退は、140年を越える大会史を振り返っても、驚きの番狂わせのひとつに数えられるだろう。
 
 パリ・サンジェルマンに屈したCLのベスト16敗退は、二度のリードを守り切れずにホームで引導を渡された。しかも退場者を出して1人少なかった相手にだ。以前では考えられなかったような敗北が、こうして二度続いた。
 
 もちろん、2004年から07年までの第一次政権でも取りこぼしはあったし、そもそもCL優勝は果たせなかった。とはいえ、ベンチでの所作を含め、いまのモウリーニョがどこか淡泊な印象を抱かせるのは気のせいだろうか。
 
 いずれにしても、モウリーニョはもはや特別な指揮官ではないのか。
 
 チェルシーを最初に率いた当時と決定的に違うのはサッカー界を取り巻く状況だ。もっとも大きな変化は、ファイナンシャル・フェアプレーが導入され、カネにモノを言わせたタレントの乱獲が許されなくなったことだろう。
 
 第一次政権のモウリーニョは、オーナーのロマン・アブラモビッチの全面的なバックアップを得て、超が付く大型補強で戦力を整え、自らの志向を体現するチームを作り上げた。しかし、こうした強引なやり方はもはやできない。
 
 時代は変わり、第二次政権のモウリーニョが託されているのは、中長期的なプロジェクトだ。自前のタレントを育てながら常勝軍団を築くことが命題である。就任2年目の今シーズンはプレミアリーグの覇権奪還がノルマで、CL制覇までは求められていない。
 
 CLとFAカップの早期敗退をもってモウリーニョの手腕を云々するのは、したがってナンセンスだ。プレミアリーグ優勝に向かってひた走り、リーグカップを制してタイトルを手に入れた。ロンドンに舞い戻ったモウリーニョの二度目の航海は、順調に進んでいると評価していいだろう。
 
【記者】
Dan LEVENE|GetWestLondon.com
ダン・レビーン/GetWestLondon.com
チェルシーのお膝元、ロンドン・フルアム地区で編集・発行されていた地元紙『フルアム・クロニクル』でチェルシー番を務め、現在は同紙が休刊して全面移行したウェブ版『GetWestLondon.com』で引き続き健筆を振るう。親子三代に渡る熱狂的なチェルシーファンという筋金入りで、厳しさのなかにも愛ある筆致が好評だ。
【翻訳】
松澤浩三
 
 
 
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事