【川崎】“触覚”や“聴覚”で体感するサッカー。等々力での新たな取り組み

2020年10月22日 本田健介(サッカーダイジェスト)

名古屋戦で行なわれた観戦体験

手の触覚でリアルタイムに戦況を体感できる「HAPTIC FIELD」。描かれたフィード上にはボールの動きを伝える突起物が浮き上がり、左右の手に付けるリストバンドからは各シーンに合った振動が伝わる。

 J1の川崎がリーグ新記録となる11連勝を達成した23節の名古屋戦、舞台となった等々力陸上競技場では、ある試みが行なわれていた。

 リリースのタイトルは「PARA-SPORTS LAB.との協同による触覚デバイスを活用した視覚障がい者向け観戦体験の提供について」。

 コンセプトは「『視覚』以外の情報でサッカーを楽しむ」ことだ。これまで最新テクノロジーを活用し、新たな観戦体験の開発など、パラ競技の普及、およびパラアスリートの可能性の拡張に取り組んできた「PARA-SPORTS LAB.(パラスポーツラボ)」が、手の触覚でリアルタイムに"ピッチで今、何が起こっているのか"を体感できる「HAPTIC FIELD」というデバイスを開発。この最新技術を応用する試みが、サッカー界、そしてJリーグとして初めて、等々力陸上競技場で行なわれたのだ。

 試合前、メディア向けの説明会で披露されたのが、縦が約24・36センチ、横が約35・6センチ、高さが約11・36センチ、重さ約2キロのピッチ図が描かれた箱型の機器「HAPTIC FIELD」(写真)だ。ピッチ部分には小さな突起が浮き出るようになっており、手の"触覚"で、ボールの動きを確認できる仕組みで、ラジオの実況を耳で聞きながら試合の展開をリアルタイムで楽しむことができる。

 また手首に巻くリストバンドは、右と左がそれぞれ、ホームチームとアウェーチームの動きに連動しており、各シーンに応じて振動。例えば、左手のチームがシュートを打った場合は、「シュート」の振動が伝達されるように、「シュート」「ブロック」「喜び」など様々なシチュエーション、選手の躍動感を振動によって伝えてくれるという。
 本来はブラインドサッカーの観戦をさらに充実したものにするため、開発がスタートしたというこの機器。どの情報を伝えるべきか精査し、トライアンドエラーを繰り返して現在の形に行き着いたという。関係者によれば「多くの意見を取り入れ、さらにグレードアップしたい」とのことだ。

 今回、川崎と協力体制を築くことになったのは「フロンターレさんがこうした活動に最も熱心だという話を聞き、提案させていただいたところ、話が進みました」(関係者)という。名古屋戦では"観戦体験"として行なわれたが、今後は実用化を目指すようだ。サッカーの可能性を広げそうな画期的な取り組み。多くの人がともにスタジアムで興奮を共有できる理想的な環境作りへ、大きな一歩と言えるだろう。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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