【識者コラム】プライドを示した自己紹介に、誰もが行き着くスタイルを示唆…。新監督会見から読み取れたもの

2015年03月14日 加部 究

技術委員長が「このタイミングでは最高の監督に来て頂けた」と自負するに値する人材。

ハリルホジッチ新監督は冒頭、相応のプライドを示した自己紹介を行なった。(C) SOCCER DIGEST

 寡黙との風評を耳にしていただけに、確信に満ちた饒舌ぶりには少々面喰った。
 
 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、成功体験が蓄積し、しかも今脂の乗り切った指導者らしい自信を漲らせ「日本代表を復活させる」と豪語した。
 
「JFA(日本協会)以外の代表、さらにはクラブチームからも、いろんなオファーを受けた」
「少しだけ時間が欲しい。そうすれば、必ず大きなことを成し遂げる」
「日本は現在FIFAランク55位。私がアルジェリアの代表監督を引き受けた時は52位だったが、3年間仕事をして17位に上昇した」
 
 手前味噌ではあるが、不快感はなく相応のプライドを示した自己紹介と言えた。
 
 名選手から名監督になり、理想的なサクセスストーリーを紡いで来た。その点では、自ら「親友だ」と言うイビチャ・オシム氏に被る。ブラジル・ワールドカップでは、試合ごとに戦術を変え、大幅に人を入れ替えながら、グループリーグを突破してアルジェリア国民の心を鷲掴みにした。
 
 その点ではアルベルト・ザッケローニ氏とは対照的で、明らかに引き出しは多い。格上と見られるベルギー戦では徹底して引きながら勝点奪取を逃すと、一転して勝利が必要な韓国戦ではキックオフから攻勢に出て前半だけで3ゴールをラッシュ。試合を決めてしまった。さらにはノックアウトステージに入ると、後に世界チャンピオンとなるドイツの前に立ちはだかり、カウンターから何度もゴールを脅かした。
 
「世界一のチームが相手でも勝つためにトライする。最悪なのは、トライしないで負けることだ」
 
 結局ドイツ戦は、延長の末に1-2で敗れるが、アルジェリアに戻ると「道ですれ違う人たちが、みんな幸せそうな顔になっていた」と言う。ラジャ・カサブランカ(モロッコ)をアフリカチャンピオンに導き、2部から昇格させたリール(フランス)を率いて欧州チャンピオンズ・リーグに進出。人気クラブのパリ・サンジェルマンでカップ制覇も経験し、アフリカに渡って代表チームでも成功した。日本協会の霜田正浩技術委員長が「このタイミングでは最高の監督に来て頂けた」と自負するに値する人材だろう。

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