低迷する磐田の再建を担ったのは、黄金期を築いた指揮官。鈴木政一監督が着手した改善策のポイントとは?

2020年10月03日 高橋のぶこ

最優先事項はディフェンス面の改善

23試合を終えて、戦績は7勝9分7敗、勝点30の12位。鈴木新監督の下、立て直しを図り、巻き返したい。写真:徳原隆元

 元から報道陣への公開予定となっていた10月2日のエコパスタジアムでの練習に、前日まで指導していたフェルナンド・フベロ監督とダニエル・ルビオルコーチの姿はなかった。

 練習前にグラウンドに選手を集めて短いミーティングを行なったのは、今季強化本部長を務め、この日から急きょ指揮を執ることになった鈴木政一"新"監督。選手たちは、チームに残ったフアン・ヌニェスフィジカルコーチのかけ声でアップを終え、2タッチの"鳥カゴ"練習などを行なったあと、2グループに分けられ、攻撃陣のグループに西野泰正コーチ、守備陣に鈴木監督とともに就任した服部年宏新コーチがつき、それぞれのメニューをこなした。

 攻撃は左右クロスと中央からのシュート練習でこれまでと大きな変化はなかったが、守備練習は、フベロ体制下ではなかった細かなものだった。

「(相手に対して)ふたりで行ってもアバウトな寄せでは間を取られてしまう。味方の位置を確認して、そちらに誘導しよう」。「(ボールと相手の)両方を見られるポジションを常に取れ」「もう一歩前に出ていい」「かけひきやステップを意識して」――。

 鈴木監督や服部コーチは時々プレーを止め、一人ひとりに具体的なアドバイスを与え、選手とコミュニケーションを取りながらトレーニングを進めた。最後は、8対8のハーフコートゲームを行ない、新体制初日のトレーニングを終えた。

 今季から強化本部長としてチームの戦いぶりを見てきた鈴木監督が、まず重点を置くのはディフェンス面の改善だ。 
「ボールサイドで数的同数や数的優位であっても、局面を打開されたり、突破される場面がある。3対1の状況でもボールを動かされてしまう時があったが、3対1にしたらそこで必ず奪い切らなくてはいけない。

 ボールが動くたびにポジション修正を的確に行ない、できれば常に同数以上に持っていきたい。マーキングのポジション、身体の向きなど、色々な部分の改善が必要だと感じた。1回の練習で変わるかといえば難しいし、リスクもあるが、ここは変えていかないといけないということで、今日は特に守備を中心にトレーニングした。服部は守備のスペシャリスト。彼のアドバイスから学んでもらい、質の高いプレーヤーになってほしいと思っている」

 新指揮官は、練習後のリモート会見でそう語った。
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 折り返し地点から2試合が過ぎた23節を終えて、昇格圏内の2位と勝点15差の12位に順位を落としたことを受け、フロントはフベロ監督解任の決断を下した。

 昨年9月、降格圏に沈んだ状況のなか、自ら身を引く形で辞任した名波浩監督の後を受けたフベロ監督は、ボールを支配し、サイドチェンジをふんだんに織りまぜたパスワークで相手を揺さぶり、サイドを起点にゴールを陥れる攻撃サッカーを標榜。チームの立て直しを進めてきた。

 結局、残留はならなかったが、1年でのJ1復帰を目指し、今季は攻守の切り替えの速さ、ボールを失ってもすぐに奪い返すプレッシングをテーマに加えてチーム作りを推進。開幕戦に勝利し、コロナ禍で中断となった期間を利用して、じっくりと戦術の浸透に取り組んだ。しかし、再開後は思ったように勝点が伸びなかった。
 

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