【川崎】踏み出した新たな一歩。約10か月半ぶりのスタメン復帰に中村憲剛が抱いた感慨深き想い

2020年09月26日 本田健介(サッカーダイジェスト)

「負けてらんねぇ」。嬉しい発見が

約10か月半ぶりに先発復帰した中村。その横浜FC戦では45分、プレーした。写真:田中研治

[J1第18節]川崎3-2横浜FC/9月23日/等々力

"カズ"こと三浦知良の先発としての、J1最年長出場記録(53歳6か月28日)更新に沸いた川崎と横浜FCの一戦。試合前、カズと抱擁を交わし、感慨深き想いを胸にしていた男がいた。13節(8月29日)の清水戦で左膝の怪我から約10か月ぶりに戦列復帰し、途中出場ながらいきなりゴールを決めてみせた"川崎のバンディエラ"中村憲剛である。それから4試合、出番は訪れなかったが、いよいよスタメンを掴んだのである。

「それまでは当たり前だったじゃないですか…」

 試合2日後のオンライン取材でそう語りかけてくれた中村は、約10か月半ぶりのスターティングイレブンとしての入場シーンをしみじみと振り返る。舞台はホーム、等々力陸上競技場。待ち望んでいた瞬間だった。

「一度離れて、またあそこに立つと、やっぱりスタートから出るというのは特別なことだと改めて思いましたね。『あぁこういう感じだったな』と。だからいつも以上にキョロキョロしていたと思いますもん。懐かしみながらというか、そういう意味ではスタメン復帰できたのが等々力だったのは、凄くありがたかったです」

「ラインがパンクするかと(笑)。100件以上来ると99に+が付くんですね。初めて見ました」

 笑いながら清水戦後の反響を語ってくれていた男は、しかし、14節の横浜戦、17節の浦和戦ではベンチ入りするも出番なし。それでも、その時の心境を覗うと、発見があったと明かしてくれた。

「エスパル戦に出た後は、いつでもいけるように準備はしていましたし、ベンチに入って出なかった試合、ベンチに入れない試合もあって、その時に凄く悔しかったんですよ。ただその気持ちが自分にあったのが嬉しくて」

 それは怪我を治し、ひとりのサッカー選手に戻れた瞬間だったのだろう。

「負けてらんねぇ」

 シンプルであり、プロ17年で常に抱え続けてきたモチベーション。熱き火が自らの中に宿っているのを再確認できた場面でもあった。
 
「(試合に出られず)仕方ないと思うところもあるのかなと考えていたんですよ。でもちっともそうでなくて。あったのは『やっぱり出たい!』『試合に出してくれ!』という想い。だからこそもっと練習からやらなくちゃいけないなと。そういう意味ではずっとポジティブでしたね。

 ただ自分の状態は自分でよく分かっている。だからもっともっとやらないと勝負にならないという想いもあった。膝の状態、コンディション、チームでの立ち位置は理解しているので、やっていくしかないなと。そういう意味では出ないと分からないことは一杯あるなと感じました。鬼さん(鬼木達監督)にもやってみないと分からないことはあるよと、アドバイスをもらっていて。相手がフレッシュな状態で、守備組織を組んでくるなかで試合に出ることはすごく大事だからと。だからスタートから出られて、ありがたかったですし、期待に応えないといけない立場でもあります。どんどんやっていきたいですね」

 新しい挑戦は始まったばかり。だからこそ45分の出場ではあったが、「収穫しかないというか、すべてにおいて自分にとって有意義な時間だったと思っています。長期離脱からの体力の戻し方は初めて勉強しているところで、それを含めて新鮮でもあるのかな」と力強く語る。そして鬼木監督も「まず45分できたのが大きい」と口にするゲームでもあった。
 

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