【広島】人柄がにじみ出る青山敏弘の気遣い。練習後に歩み寄ってきて…

2020年09月22日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

中盤の低い位置でチームを下支えしている姿が印象深い

広島の青山は、柏戦でもチームのために奔走した。写真:滝川敏之

 サンフレッチェ広島の青山敏弘は「気遣いの人」だとよく感じる。特に印象に残っているのは、昨年9月に応じてくれたインタビューでのコメント。右膝の大怪我から復帰後だったのだが、自身の長期離脱中にチームの世代交代が進んでいる状況を踏まえて、次のようなことを語っていた。

「自分の影響力があるのは知っている。だからと言って、若くて良い選手が出てきたのに、彼らの邪魔をしたくない。このチームが新しいチームになっていくなかで、自分がどう……。分からないですよ。うん……、分からないですけど、とにかく、怪我もあって上手くいかないなかで、一歩引いていろいろと思っていました」

 もちろん、自らがサッカー選手として生き残っていって、第一線でまだまだ活躍しようとしている。ただそれだけではなく、チーム、そして仲間が上手くいくために何ができるかについても、大事に考えていると感じた。

 今週木曜日に全国発売される「サッカーダイジェスト」では、「司令塔が語る『司令塔論』」という特集を組んでいる。その誌面でも広島の司令塔として青山がインタビューに応じてくれた。

 「司令塔論」にも、「チームや仲間が上手くいくために何ができるか」を大事にしている想いが垣間見えたのだが、それは、直近の柏戦でも表現されていた。

 ダブルボランチを組む川辺駿が豊富な運動量を活かして動き回る分、青山は川辺の動きに合わせて中盤のバランスを保っていた。加えて、攻撃が詰まった際の逃げ道となるパスコースを後方で作り、ボールを受ければサイドにパスを散らす。広島のサイド攻撃が上手く循環するように、中盤の低い位置でチームを下支えしていた。

 たぶん性根から気遣いの人なんだと思う。印象深いエピソードを紹介したい。

 前述した昨年9月のインタビューは、「サッカーダイジェスト」にて広島のクラブダイジェストで特集を組んだ企画の一部だった。その特集内では荒木隼人のインタビューも掲載。連日の取材で青山が1日目、荒木が2日目だったのだが、荒木のインタビュー前にクラブハウスの出口付近で練習を見ていた時のことである。トレーニングを終えて引き上げる青山が筆者に歩み寄ってきた。

「昨日はありがとうございました」

 そう言っておじきをしてくれた。練習後に報道陣へ「お疲れ様です」と挨拶してくれるサッカー選手は多いが、メディア全体にではなく個人的にわざわざ挨拶してもらい、「なんて律儀なんだろう」と感動した。その紳士ぶりは、丁寧に受け答えしてくれた今回のインタビューでも、なんら変わっていない。やはり「気遣いの人」である。

 チームには脚光を浴びる選手がいれば、必ず縁の下の力持ちがいる。今季の広島は昨季に比べれば、まだ上位へ進出していないが、一方で下位に沈むほどの大崩れはしていない。それは、怪我なくコンディション良好の「気遣いの人」が土台となって支えているおかげなのだろう。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事