久保建英、スタメン奪取への糸口は? 「空回りした」ラ・リーガ開幕戦を戦術的観点から振り返る

2020年09月16日 清水英斗

トップ下で起用されるケースが多かった久保。開幕戦はトップ下の存在しない布陣に…

ラ・リーガ開幕戦で後半途中から出場した久保だが、大きなインパクトは残せなかった。(C) Mutsu KAWAMORI/Mutsu FOTOGRAFIA

 プレシーズンマッチの流れを汲むかのように、ビジャレアルの開幕戦、久保建英はベンチスタートになった。2列目の攻撃的ポジションなら左サイドでも、右サイドでも、どこでも可能性がある久保だが、今のところはトップ下で起用されるケースが多い。

 しかし、ウエスカとの開幕戦、ビジャレアルのシステムは4-4-2だった。トップ下が存在しない。FWはパコ・アルカセルとジェラール・モレノが名を連ね、空席となったトップ下のスペースには、ジェラール・モレノが下りて縦パスの受け手となる縦関係の2トップが組まれた。この技術とキープ力に長けたスペイン代表FWは、ビジャレアルの攻撃のキーマンだ。

 圧倒的にボールを握って攻め込んだビジャレアルだが、ウエスカの組織的な守備にスペースを消された。背後を狙ったパスもオフサイドの網にかかり、なかなか攻め切れない。そんな展開が続くと、逆にウエスカのほうが先制ゴールを挙げることになった。42分、ウエスカはGKの配球から自陣でグラウンダーのパスをつなぎ、高い位置からボールを奪おうとするビジャレアルのプレスをかわして、右サイドのオープンスペースへ展開。最後はパブロ・マフェオが切り返し一発でDFをかわし、ゴール隅へ流し込んだ。

 追う展開となったビジャレアルは後半、さらにボール支配を強め、逆にウエスカは自陣に引く時間が長くなった。

 ビジャレアルの攻撃でもうひとり、分かりやすいキーマンと言えるのは、右サイドの突破型ドリブラー、サムエル・チュクウェゼだろう。若手で左利き、得意ポジションなど、久保との共通点が多く、ポジションを争うライバルのひとりとも目される。しかし、この開幕戦では相手の素早いチェックに苦しみ、良い状態で1対1を仕掛けるチャンスがあまり多くなかった。そのためか、後半はチュクウェゼが中央へ入り、入れ替わってジェラール・モレノが右サイドへ開き、相手の背後でフリーにボールを受けようとする試みが見られた。ここが打開のきっかけとなり、いくつかのチャンスを作った。

 そんなふうにスペースの使い方が変化していく中、ウエスカは割り切って引いているので、司令塔のパレホが自由にボールを持つことも多くなった。しかし、中でのコンビネーションは今ひとつ活性化しない。ポジションが重なって、お互いにパスコースを潰し合ったりすることも増えた。それでも68分、FK場面でのVAR判定により、ハンドでPKを得たビジャレアルはどうにか1-1に追いついたが、ウエスカの組織的な守備を崩すのは最後まで苦労していた印象だ。
 

次ページかなりの低評価を下されてもおかしくはなかった終盤のシーン

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