【長崎】「一度、肩の荷を下ろすとき…」手倉森監督が示す首位奪還への道筋。自信の裏には仙台時代の苦い経験があった

2020年09月14日 藤原裕久

9月の4試合は0勝3分1敗。それでも指揮官が冷静なワケ

手倉森監督は仙台時代の経験を胸に、チームの立て直しを図る。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J2リーグ19節]長崎0-0磐田/9月13日(日)/トランスコスモススタジアム長崎

「ボールを動かしながら、コンパクトさを意識してゲームを進められた。連戦最後にこれだけのゲームができたので、今後は怖がらずにやっていける」

 19節のジュビロ磐田戦を0-0で終えた手倉森誠監督の言葉は、あくまでも冷静だった。これで9月に入ってからの4試合は0勝3分1敗。得点は2試合連続なしで、前節には2か月以上守ってきた首位から陥落している。

「性格的にずっと1位でいたかった」という手倉森監督だ。悔しさは当然ある。それでも、その表情に焦りの色は見られない。当然だろう。そこには、監督の中にある過去の苦い経験と、首位奪還への道筋があるのだ。

 J2では破格とも言える豊富な戦力と、大胆な選手起用でスタートダッシュに成功した長崎は、第5節で首位に立つと第9節まで無敗を堅持。第10節で徳島ヴォルティスに今季初黒星を喫し、第12節でモンテディオ山形に敗れても首位の座が揺らぐことはなく、リーグの絶対強者として君臨。手倉森監督も、追われる立場と追う立場を理解し、勝負の厳しさに徹する『首位で居続ける覚悟』を選手たちに説くなど、万全の首位堅めを進めていた。
 
 その一方で、手倉森監督の中には「どこかで肩の力を抜いてやらなければ」という思いが消えなかったという。それは、2012年にJ1でベガルタ仙台を率いていたときの記憶に起因する。

 当時、第17節まで首位をキープしていた仙台だったが、第18節でサンフレッチェ広島に首位の座を奪われたとき、選手を首位へあおり過ぎて、残り3分の1でチームがバテてしまい、広島を追撃することができなかった。9月に入り、アルビレックス新潟とツエーゲン金沢に引き分け、さらにヴァンフォーレ甲府に敗れて首位から陥落した時の経験が重なったという。

「選手には首位で居続ける覚悟が大事だと話をしてきたんですが、連戦の中ではそれが圧力になったのかもしれない。10月にアウェー4連戦があるんですが、あのままだったら4連敗もあり得た。首位陥落はネガティブな要素だろうけど、仙台の経験を考えるとありだと思っています。一度、肩の荷を下ろすときなんだと考えて、今度は追う立場としてやっていく」
 

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