「本気で育成を強化するなら――」“ロールモデルコーチ”内田篤人に期待すること

2020年09月13日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「ぶちのめされた俺とか」が伝えられること

『ロールモデルコーチ』に就任した内田。若手の育成で、その豊富な経験や知見を活かしてほしい。(C)SOCCER DIGEST

 先日、14年半の現役生活にピリオドを打った内田篤人。その後のセカンドキャリアが注目されていたが、9月13日、日本サッカー協会(JFA)と『ロールモデルコーチ』として契約を結んだことが発表された。アンダーカテゴリーの代表チームをはじめ、JFAが取り組む若年層の強化および普及に関わる活動に参加し、世界の舞台で培った経験や知見を後進の育成に活かす。

「頑張ります!」とコメントした内田は以前、サッカーダイジェスト本誌のインタビューで、自らの未来を予言するかのような話をしてくれたことがある。古巣の鹿島に復帰した直後の18年2月のことだ。

 Jリーグと世界との差について「歴史が違うから、差があるのはしょうがない。でも、追いつき、追い抜こうと考えているなら、それなりの時間が必要」としたうえで、「どうやってその差を縮めていくのか。それなら、海外に行って、いろんなことを痛感して、ぶちのめされた俺とかが日本に戻ってきて、自分が感じたことを伝えるべきなんじゃないかと」徐々に考えるようになったという。

 日本サッカーがさらに発展するためにはどうすればいいか。「いつまでも外国人に頼っていられない。育成にしても……」と語り、次のように続ける。

「ドイツで若い選手が台頭してくる割合は、日本の比じゃない。向こうは"化け物"みたいな若手が育つシステムが、ちゃんとできている。

 ドイツには部活みたいなのがなくて、地域ごとにユースのチームがいくつかあって、そこに上手い子たちが集まり、シャルケのアンダー17に入ったりする。そこからまたアンダー19、アンダー23と駆け上がっていくとか。そうやって凄い選手が育ってくる。日本の部活とかユースとは仕組みが違う」

 自身が長くプレーしたドイツでの実情を見聞し、それを参考に日本サッカーにどう還元していくか。内田は「本気で育成を強化するなら、システムを根本的に変えていくしかないと思う」という持論も展開した。

「もしかしたら、俺が伝えられるのは、選手としてというよりも、もっと大きな枠組みのことなのかもしれない。引退した後のほうが活躍できるのかも(笑)」

 当時はそう冗談めかして人懐こい笑顔を見せていたが、いずれにしても、現役時代から日本のサッカーがどうすればもっと強くなるのか、それを熟考していたのは間違いない。新たな一歩を踏み出した内田のさらなる活躍に注目だ。

文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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