【大分】機能しなくなった“片野坂スタイル”、ボランチコンビのベンチ外…一体何が起きているのか?

2020年09月11日 柚野真也

「チームで共有できるようになってから大分のサッカーが楽しくなる」

試合中も激しいジェスチャーで指揮を執る片野坂監督。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ15節]大分2-2湘南/9月9日(水)/昭和電工ドーム

 15節・湘南ベルマーレ戦は早い時間帯に2失点したが、後半に巻き返してドローとした大分。3連敗こそ免れたが、勝てない試合が続いている。

 15試合を終えて3勝4分8敗、勝点13。他チームの試合消化数が違うため暫定ながら14位となっている。チームはどのような状況にあるのか。

 1月のチーム始動時に片野坂知宏監督が掲げたテーマは「積み上げ」。チームを率いて5年目となる指揮官は、GKからボールをつないで攻撃を組み立てるスタイルを継続する。

 システムは4バックを試したこともあるが、慣れ親しんだ3バックで、ここまでは戦っている。得点力不足を解消するために個の能力の高い新戦力を前線に加えたが、結果から言うと、いまだにハマったとは言い切れない。その理由のひとつに連戦によるコンディションのバラつきがあり、全員が揃って練習できなかったことにある。

 11人が攻守に渡って最良のポジションを取り続け、優位性を獲得する独自の"ポジションサッカー"を掲げる片野坂監督のスタイルは、組織、決まりごとの上で成り立つ。立ち位置、パスひとつ切り取っても、直前の動き出しや流れをビデオで分析し、実戦で試してはまた分析する。それぞれのプレーにテーマを持って小さなPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善の仕組み)を繰り返す。
 
 昨季加入した小塚和季は「はじめは次のプレーの予測が1つか2つくらいしかできなかった場面でも、3つ4つと増え、それがチームで共有できるようになってから大分のサッカーが楽しくなる」と語ったのは昨年の残暑が過ぎた頃だ。

 しかし、今季は新型コロナウイルスの影響で試合間隔が縮まる過密日程となり、どうしてもコンディションを整えることを優先した。その代償は大きく、試合での課題を修正する時間は少なく、PDCAサイクルが機能しなかった。

 そのため戦術理解に一日の長のある昨年までのメンバーを軸に据え、組み合わせを試合ごとに変えて戦術の浸透を図ったが思うような成果が出ていない。とりわけ"ポジションサッカー"の中枢を担うボランチは人材不足だ。

 シンプルなパスと守備の堅さが特性のバランサーを好む片野坂監督が信頼する、昨季からの主軸二人がともにコンディション不良でベンチから外れている。成長著しい2年目の長谷川雄志と、その長谷川の良さを引き出し独り立ちさせた小林裕紀だ。

 前者は13節・浦和戦以降はベンチから外れ、後者は5節のG大阪戦を最後にピッチに立っていない。公式発表がなく、非公開練習により確認は取れないのだが、広報曰く「練習には参加している」とのことだ。
 

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