「調子乗り世代」では異色の存在。少し斜に構えたクールな内田篤人の面白さを知ったU-20W杯カナダ大会

2020年08月22日 佐藤俊

「同じグループ?」と問いかけると、「いや、自分はあいつらをある意味すげえなぁって見ている感じ」と笑った

2007年のU-20W杯ではレギュラーとして活躍した内田。写真:サッカーダイジェスト

「ここで終わっちゃうのも、試合ももったいなかった」

 内田篤人がポツリとそう呟いたのは、2007年U-20ワールドカップ・カナダ大会のベスト16でチェコにPK戦の末に敗れた後だった。

 のちに鹿島でレギュラーになり、日本代表、そしてシャルケでも主力になった内田が初めて世界と戦い、世界の怖さ、世界と戦うことの楽しさを感じたのはこの大会だった。と、同時に内田という選手の少し斜に構えてクールに物事を見る目が面白いと感じたのも、この大会だった。

 この時のU-20日本代表は、99年ワールドユース・ナイジェリア大会で準優勝した「黄金世代」に近い雰囲気があった。ナイジェリア大会の時、小野伸二ら選手たちは初戦のカメルーン戦に負けた後でも「俺たちの方がいいサッカーをしている」「世界と十分に戦える」と圧倒的な自信を持って勝ち上がっていった。また、播戸竜二、加地亮らが笑いで場を盛り上げ、非常に明るいチームだった。

 カナダ大会でのU-20日本代表の選手たちもその自信はどこから来るかと思うほど自信満々で、非常に明るいチームだった。例えば、ゴールパフォーマンスはファンが喜んでくれることを意識して考え、本大会では「ビリーズブートキャンプ」の真似や侍の抜刀シーンで現地ファンの喝采を浴びた。取材では独特のコメントを残し、時には笑いも取り、代表チームというよりは部活動みたいなノリと明るさに満ちていた。そんな彼らは、「調子乗り世代」と言われ、その先頭にいたのが槙野智章、柏木陽介、安田理大、森島康仁らだった。

 内田は、そんな彼らから少し距離を置いていた。

「同じグループ?」と問いかけると、「いや、自分はあいつらをある意味すげえなぁって見ている感じ」と笑って答えた。その表情がやけに大人びて引率の先生のように見えた。面白おかしな言動でチームを盛り上げる彼らのことを好意をもって見ているが、自分はやらない。実際、ゴールパフォーマンスには参加しなかった。「あんなことやるの知らなかったんで」と笑っていたが、内田は彼らが楽しくやっているのを外から眺めて楽しんでいる感じだった。
 

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