32歳での引退は早かったのか? 内田篤人の生き方とは…

2020年08月21日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

内田はきっと後悔していないはずだ

サッカーダイジェストのインタビュー取材に何度も応じてくれた内田。写真:サッカーダイジェスト

 決して親しい間柄ではない。彼のサッカー人生をくまなく追ってきたわけでもない。しかし、どういうわけか「とても悲しい」という感情が込み上げてくる。
 
 きっと、内田篤人というプロフットボーラーに魅せられていたからだろう。過去3回ほど担当した独占インタビューでも優れた人間力を見せつけられ、それ以来、ずっと気になる存在だったから、今回の現役引退を聞いた直後は「とても悲しい」と思ったのだ。
 
 内田が引退を表明したのは2020年8月20日。クラブリリースによれば、8月23日のG大阪戦後に引退セレモニーが行なわれる予定で、同31日に鹿島との契約が終了するという。32歳での引退に対して「早すぎる」との声も聞かれるが、果たして本人はこのタイミングでの引き際を後悔しているのだろうか。

 
 あくまで推測ながら、内田篤人のサッカー人生に「後悔」の二文字はないのではないか。その根拠のひとつが、2016年12月28日のインタビュー取材で本人が話してくれた内容にある。「膝の怪我を押してブラジル・ワールドカップやチャンピオンズ・リーグを戦ったことを、本当に後悔していませんか?」という問いに、彼は少し間を取ってこう答えたのだ。

「してないです。(14-15シーズンの)チャンピオンズ・リーグ(で負ける)まで戦おうと決めてましたから。ただ、かなり無理をしたので、負けたら『もうダメ』と言うつもりでした」

 ところが、15年3月10日のレアル・マドリ―戦(チャンピオンズ・リーグ)に負けたあとも、内田は試合に出た。同年3月27日の日本代表戦、チュニジア戦と31日のウズベキスタン戦にである。明らかに無理を押しての出場だったが、本人は当時を振り返り次のように話した。

「そこはやっぱり部活上がりの、理不尽な環境で培った根性が染みついているからです(笑)。『行けるか』と訊かれたら、迷わず『行ける』と言います」

 そのスタンスが選手生命を縮めた一因かもしれない。でも、それが内田の生き方であり、だからこそ、当時の彼は言った。「代表戦に出たこともまったく後悔してない」と。
 

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