より尖っているのは横浜だが…師弟対決で見えた超攻撃的サッカーを目指すエスパルスの現在地

2020年08月21日 前島芳雄

ディフェンスラインとGKの位置は、どちらも横浜の方が高かった

19日のJ1リーグ11節で師弟対決が実現。清水のクラモフスキー監督(左)と横浜のポステコグルー監督が初めて対戦した。写真:徳原隆元(左)/山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部/右)

 清水エスパルスのピーター・クラモフスキー監督は、横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督のことを「兄のような存在」だと言う。2人はオーストラリア代表やクラブチームで長年師弟関係を続けてきて、2018年からの2年間は横浜の監督とヘッドコーチという立ち位置で超攻撃的サッカーを浸透させ、昨年のJ1制覇に導いた。

 その愛弟子が、今季から初めてクラブチームの監督に就任し、清水で新たなスタイルを構築しようとしている。もちろん、ベースとなっているのは横浜のサッカーだ。

 そんな中で19日に行なわれた11節の一戦で、初めての師弟対決が実現した。果たして両チームのスタイルはまったく同じなのか、それとも清水には清水の独自性があるのか。直接対決だからこそ見えた両者の関係性をレポートしたい。

 試合のほうは期待通りの打ち合いとなり、ボールポゼッションもほぼ五分五分だったが、横浜のジュニオール・サントスが強烈な個の力を見せて2得点し、粘る清水を4−3で退けた。

 そんな90分を通して、両者の相違点として清水担当の筆者が強く感じたのは、「横浜のほうが尖ったサッカーをしている」ということだった。「尖った」という言葉は「先鋭的」と置き換えても良いが、よりアグレッシブな姿勢が強調されていた。

 たとえばキックオフ直後から見えたのは、ディフェンスラインとGKのポジションの差だ。どちらも横浜のほうが明らかに位置が高い。横浜のGK朴一圭(パク・イルギュ)は、自分たちがボールを保持している際には完全にペナルティエリアの外に出て5人目のDFとして機能しており、オフサイドラインに関係なくプレーできるので、ある意味最強のスイーパーとも言える。だからこそDF陣も思い切ってラインを上げることができる。それに比べると、清水のGK梅田透吾はそこまでのリスクは冒していない。

 またディフェンスラインの設定に関しては、清水のほうは2月の開幕時と比べても少しマイルドになっている印象がある。失点を減らせず結果が出ない時期が続いたので、現実問題としてリスクを抑えるための微調整が必要だったのかもしれない。ただ、今後戦術的な完成度が高まってくれば、より高いラインを敷くようになる可能性もあるだろう。

 ディフェンスラインの高さは全体のコンパクトさ、すなわち中盤のスペースにも影響してくるが、決勝点を決めた横浜の渡辺皓太は「試合を通して中盤にけっこうスペースがあったので、そのスペースでボールを受けて、はたいてというのは(交代出場の際に)意識していた」と語る。
 

次ページ清水の選手たちは「やっていることは間違っていない」という信念をより強固にしたはず

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