J2最下位の群馬にようやく浮上の兆し…「大前の本領発揮」と「控え組の台頭」がポイントに

2020年08月21日 伊藤寿学

大前、田中がゴールルートを模索していく

山口戦で大前が今季2点目をゲット。調子を上げてきた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[J2リーグ13節]群馬2-1山口/8月19日(水)/正田スタ

 J2で最下位に沈む群馬が浮上のきっかけを探っている。今季、奥野僚右監督を招聘し、大前元紀、岩上祐三ら実績ある選手を揃えてシーズンに突入したが、黒星が大きく先行していた。

 試行錯誤が続く状況で、13節のホーム山口戦では4試合ぶりの勝利を挙げて追撃の狼煙をあげた。

 J2復帰初年度で戦力的にも難しい戦いになることは、ある程度は想定されていたが、それでも予想以上の苦戦を強いられている。

 奥野監督は、クラブ発足1年目の群馬県リーグ、関東リーグ時代に選手兼任で初代監督を務めたクラブレジェンド。周囲、地域の期待は大きかったが、12節までホーム戦は開幕7試合7連敗で、応援自粛のスタジアムにため息が漏れていた。

 チームはポゼッションスタイルを標榜するが、その一方で守備の強度、運動量が上がらなかったのが低迷の要因のひとつだった。
 
"ホームでこれ以上、負けるわけにはいかない"。山口戦は、奥野監督のプライド、チームとしての威厳が懸かった試合になった。指揮官は、大前、林陵平のレギュラーFWをベンチスタートさせ、青木翔大、進昂平のユニットをスタメン起用。前線から果敢にプレスを仕掛けることで、山口のポゼッションを封じ込めていく。

 リズムは悪くなかったがスコアレスで迎えた後半6分、自陣でのクリアミスが山口のイウリに渡り、ゴールを奪われてしまう。

 奥野監督は後半12分、大前、林、田中稔也の攻撃3枚のカードを同時に切り、攻撃姿勢へシフトチェンジ。酷暑での消耗戦となっていったが、体力を蓄えていた大前、田中がバイタルエリアを自在に動いて、ゴールルートを模索していく。そして後半35分に大前が右サイドからのクロスをファーサイドで合わせて同点に追いついてみせる。

 さらに勢いに乗ったチームは後半アディショナルタイムに大前のシュートのこぼれ球を受けた加藤潤也が右足を振り抜き、劇的な決勝ゴールで激戦にピリオドを打った。エース大前が本領を発揮し始めてきたのは好材料だ。
 

次ページ山口戦の采配は指揮官にとって新たなチャレンジだった

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