「カノン砲」へまっしぐら ロッベンの充実【バイエルン番記者】

2015年02月27日 パトリック・シュトラッサー

「アリエンはキャリアで最高の状態にある」とOBのエッフェンベルク。

快調にゴールを重ねるロッベン。チームメイトの協力も得て、自身初の得点王に向かってひた走る。 (C) Getty Images

 バイエルンは今シーズン、本当にそれを成し遂げることができるのだろうか? それはとても古い記録を更新することである。1971-72シーズン、"爆撃機"と呼ばれたゲルト・ミュラーを擁したチームは、34試合で101得点を記録した(そのうち40ゴールをミュラーが挙げた)。これはクラブレコードだ。
 
 2014-15シーズンのバイエルンは、ハンブルク戦(8-0)やパーダーボルン戦(6-0)の"ゴール祭り"もあって、22試合で59得点。ちょうど71-72シーズンと同じペースでゴールを量産しているのだ。
 
 43年前の偉大な記録に手が届くとしたら、それは主にアリエン・ロッベンの貢献によるものだろう。ロッベンはここまで16ゴールを挙げている。ウィンターブレーク明けは5試合で6ゴールと好調だ。後半戦に限れば、同じオランダ代表でヴォルフスブルクのバス・ドストが9得点とその上を行っているが、シーズン通算は11得点。ロッベンは得点ランクのトップに立つ。
 
 誰もが思っていることを口にしたのは、クラブOBで元主将のシュテファン・エッフェンベルクだ。
 
「アリエンはキャリアで最高の状態にある」
 
 ロッベンは初のカノン砲(得点王に贈られる大砲型のトロフィー)獲得に向かって、まっしぐらに突き進んでいる。
 
 ロッベンを追うのは、フランクフルトのアレクサンダー・マイアーで14ゴール。以下、ドストが11ゴール、ブレーメンのフランコ・ディ・サントとバイエルンのロベルト・レバンドフスキが10ゴールで続く。ロッベンがこのままトップスコアラーのタイトルを勝ち取れば、11-12シーズンのクラース=ヤン・フンテラール(シャルケ)以来のオランダ人得点王となる。
 
 そのために、バイエルンのチームメイトは協力を惜しまないようだ。今後PKはロッベンに蹴らせるつもりらしい。
 
 実際、前述のパーダーボルン戦では、本来のキッカーであるトーマス・ミュラーではなく、ロッベンがPKを蹴った。キャプテンのバスティアン・シュバインシュタイガーがそうするように決めたのだ。
 
「試合前のランチの時さ。バスティに言われたんだ。『アリエン、お前が蹴れよ。(得点王争いを)リードしているんだから』って。それで実際にPKの笛が吹かれて、ピッチでトーマスに改めて確認したら、『いいよ、オーケー。蹴れよ!』って言ってくれたんだ」
 
 試合後、ロッベンはそんなエピソードを披露した。ミュラーといえば、本来のPK担当から強引にボールを奪ったエゴイスティックな過去がある。そんな彼が、ロッベンのためにPKを譲ったのだ。
 
「あれはトーマスからのプレゼントだった。だからお礼をしなくちゃいけないね」とロッベン。最高の恩返しは、カノン砲を獲得してクラブの得点記録を更新することだ。
 
【記者】
Patrick STRASSER|Abendzeitung
パトリック・シュトラッサー/アーベントツァイトゥング
1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年にアーベントツァイトゥングの記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり!』、2012年の『まるで違う人間のように』(シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝)がともにベストセラーに。
【翻訳】
円賀貴子
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事