無名の中学時代から高校ナンバーワンSBへ。なぜ川崎フロンターレは田邉秀斗を獲りにいったのか

2020年08月13日 松尾祐希

181センチと上背もある期待のSB

選手権で母校初の単独優勝に貢献した田邉。来春、強豪・川崎の門を叩く。写真:田中研治

 高校ナンバーワンSBがサックスブルーのユニフォームに袖を通す。
 
 川崎フロンターレは8月13日、静岡学園高校に所属する田邉秀斗(3年)の加入内定を発表した。

 最大の武器は攻撃力だ。50メートル、5.9秒のスピードを活かしたオーバーラップと、左右の足から繰り出すクロスでチャンスに絡む。また、181センチと高さに恵まれているのも特徴の一つで、小柄なSBが多い日本にあって上背のある田邉は希少価値が高く、クラブからの期待は大きい。

 静岡学園が初の単独優勝を果たした昨冬の高校サッカー選手権で注目を集めた田邉は、今でこそ複数のクラブが興味を示す逸材だが、エリート街道を走ってきたわけではない。

 小学校時代は地区トレセンに選ばれたものの、わずか半年でメンバー外。卒業時に受験した京都サンガやガンバ大阪のセレクションも落選した。奈良YMCAでプレーした中学時代は、同級生9人が地区トレセンに名を連ねた一方で自身は選外。最終学年でCBのレギュラーを任されるも、思うような評価を得られなかった。

 ただ、ポテンシャルを発揮できなかったわけではない。

「トレセンに入っているメンバーよりも『自分が巧い』という自信がありました。試合にも出ていたので(トレセンに)選ばれていなくても、『出来るだろう』という気持ちを持っていたんです」と現状を受け止めつつ、確かな手応えを持っていたという。
 
 そんな田邉は中学卒業後に静岡学園へ入学。チームのスタイルを詳しく理解していなかったが、"選手権で優勝したい"一心で名門校の門を叩いた。最初は練習についていくので精一杯。テクニックに秀でたタイプではなかったため、技術に特化した静岡学園のトレーニングは容易くなかった。

 当時について「入った当初は技術が違いすぎて、これはダメだなと思ったんです。今でもトップチームで一番下手なレベル。夏休みはリフティングをトレーニングの最初に40分ぐらいやるんですけど、周りができても僕はできなかったんです。『恥ずかしい』と思うことは何度もありました」と振り返る。

 身体能力に恵まれながらも、技術面でチームメイトになかなか勝てない。歯がゆい想いを味わいながらも、懸命にトレーニングに打ち込んだ。すると、徐々に変化が起きていく。

「パスのウォーミングアップだけだと、技術を高められないと気が付いたんです。でも、リフティングのトレーニングはいろんな技術を養える発見がありました。中学時代と比べてトラップが上達し、ドリブルに関してもボールタッチを毎日やっているので以前よりも良くなってきたんです」
 

次ページ静学の恩師がロールモデルとして期待するのか…

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