なぜビジャレアルは久保建英を獲得したのか?番記者が明かす“プラン変更”の舞台裏「カソルラの後釜としてエメリが…」【現地発】

2020年08月11日 ハビエル・マタ

バレンシア監督時代のシルバやマタのように…

ビジャレアルへのレンタル移籍が決定した久保。育成に定評があるクラブでどんな変貌を遂げるか。(C)Mutsu FOTOGRAFIA

 ビジャレアルのこの夏の最重要補強ポイントが、2019-20シーズン終了後に退団したサンティ・カソルラ(アル・サッドへ)の後釜探しだった。

 百戦錬磨のMFは、35歳となった昨シーズンもビジャレアルの攻撃を力強く牽引。チーム2位の11得点、同トップの9アシストを記録したうえ、随一の局面打開力を示し、さらに攻撃を組み立てる役割も担った。

 ただその役割があまりにも多岐に渡ったがゆえに同じレベルの幅広い働きができる選手は、いくら市場を物色してもそう簡単に見つかるものではない。資金にも限りがあるビジャレアルにとっては不可能なミッションと言ってよかった。

 そこで首脳陣が捻り出した案が、中盤で攻撃の舵を取ることができる経験豊富なセントラルMFと、ラスト30メートルで局面を打開して相手の守備のバランスを崩し、得点もアシストもできる2列目のアタッカーの2枚獲りだ。

 前者はダニ・パレホ(バレンシア)とホセ・カンパーニャ(レバンテ)、後者はオスカル・ロドリゲス(昨シーズンはレガネスに在籍。シーズン終了後にレンタル元のレアル・マドリーに復帰)を獲得候補としてリストアップした。
 
 しかし、そうしたクラブが思い描いていた構想が急遽見直しを迫られる事態が起きた。ハビエル・カジェハからウナイ・エメリへの監督交代だ。とりわけ新指揮官が強く主張したのが、2列目の強化のための久保建英の獲得だった。

 エメリが久保に抱いているイメージは、若い頃のカソルラ、あるいはバレンシア監督時代に指導したダビド・シルバ(マンチェスター・シティ)やファン・マヌエル・マタ(マンチェスター・ユナイテッド)といったプレーヤーだ。

 2列目ならどこでもこなし、鋭いドリブルでラスト30メートルを切り裂き、自らフィニッシュにも絡む。エメリは久保の中に、オスカル・ロドリゲスを上回る局面打開力やコンビネーションで崩すスキルを見て取ったのだ。

 エメリはこうした理由を列挙し、久保の獲得の必要性を訴えた。そしてフロントはその熱意に折れる形ですでにオファーを提示していたオスカル・ロドリゲスのオペレーションを棚上げにしてまで、久保のレンタル獲得に全力を注ぐこととなったのだ。

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