[J１第９節]川崎２-０大分／８月８日／等々力

　ヒーローインタビューでの表情が明らかに異なっていた。

　ひとつは記念すべきプロ初ゴールを、アカデミー育ちとしては印象深いホーム・等々力で挙げた湘南戦後の固い表情。

　もうひとつが、リーグ戦初先発を飾り、チームの８連勝にゴールで貢献した、先の大分戦後の柔和な表情だ。

　川崎のアカデミー出身で、筑波大を経て、今季加入したルーキーの三笘薫は、独特のテンポ、そしてスピードのあるドリブルが魅力で、大卒ルーキーながら確実に進歩を遂げている。

　プロ初ゴールを決めた湘南戦は、途中出場でミスも重なり、満足できる出来ではなかった。だからこそ口をついたのは喜びよりも「ボールロストが多かった」などという反省の言葉だったのだ。
 

　しかし、鬼木達監督から求められているという守備の部分にも真摯に向き合い、プロ初先発を飾った８月６日のルヴァンカップ・鹿島戦では１ゴール・１アシストの活躍。

　そして中２日で迎えた大分戦でもスタメン出場すると、開始５分に、相手エリア内左でアカデミーの先輩、脇坂泰斗からのパスを受けると、ダイレクトで右足を振り抜き、「ミスキックだった」と振り返るもネットを揺らした。相手GKの対応に救われた部分もあったが、まさに"勢い"を象徴するようなゴールだったと言えるだろう。

　そしてこの試合で手応えも掴んだようで、本人に訊くと「今日は比較的、上手く距離感よくボールをつなげましたし、後半はランニングも良かったです。そこは評価していいのかな」と振り返る。その想いが冒頭のヒーローインタビューでの笑顔にもつながったのだだろう。

　もっとも「一番やりやすい」と話す４-３-３の左ウイングはレギュラー争いも激しく、危機感も常に抱いていると続ける。

「毎試合結果を出さないと、スタメンを取られる、試合に出られないという危機感を持ってやっています。今はタツヤくん（長谷川竜也）が怪我（７月22日の仙台戦で左膝を負傷。全治約４週間）をしていますし、今日はマナブくん（齋藤学）もいました。ただ危機感があるからこそ、それが結果につながっているとも思います」

　技巧派ドリブラーは攻撃に変化を加えられる稀有なタレントであり、プロの強度の高さにも徐々に慣れつつある。向上心の強さも人一倍だ。今後も結果を残し続け、自らの立ち位置を確固たるものにできるか。アカデミー育ちのアカッターへの注目度は確実に高まっている。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）

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