「勝利至上主義」に立ち向かい、プレミアに昇格!リーズ指揮官ビエルサの“狂信的な正義”【現地発】

2020年08月07日 エル・パイス紙

勝利よりも敗北に親しみを感じているのではないかという印象さえ…

2部を制覇し、リーズを16年ぶりのプレミア昇格に導いたビエルサ。(C) Getty Images

 勝者を称え、敗者を蔑む結果至上主義がますます横行している昨今のサッカー界であるが、そんな中、"反体制"の旗頭としてそうした現状に真っ向から異を唱えている人物がいる。

 チャンピオンシップ(イングランド2部)優勝を果たし、リーズ・ユナイテッドをプレミアリーグ昇格に導いたマルセロ・ビエルサ監督だ。その狂信的ともいえる正義感の強さは、時に勝利よりも敗北に親しみを感じているのではないかという印象さえ抱かせるほどだ。

 リーズでも、ビエルサはビエルサのままだ。今回の偉業達成においても、仮に勝者になることができなくても、周囲の人間と達成感を共有することができるように事前に社会的な"アリバイ作り"に励んでいた。

 そのためにファンの前ではミッションを全うすることのできる喜び、選手たちの前では努力に報いることの喜び、そしてクラブ幹部の前では契約と信頼に値する職務を遂行することの喜びを訴え続けた。
 
 ビエルサはまた結果だけでなく理由と根拠を求める。ただ単に幸福感に浸ることは浅ましい行為と捉え、数々の功績を手にした内容の伴った勝利でないと、歓喜に酔いしれるのを潔しとしない。

 ビエルサは、いうなれば道徳と哲学からなるサッカーの枝そのものなのだろう。

 勝利が全てという考え方が大勢を占め、敗者は除け者扱い。道徳も哲学もへったくれもない。そんな昨今の風潮などお構いなしといわんばかりに我が道を行くビエルサの正義は、エキセントリックで、そしてヒロイックだ。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳:下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事