“戦力外通告”からの逆転人生! 英敏腕記者が説くリバプール主将ヘンダーソンの人物像とは?【現地発】

2020年07月31日 ジェームズ・ピアース

「本気で練習や試合に取り込んでいない選手を滅法嫌う」

プレミアリーグのトロフィーを掲げるヘンダーソン。優勝セレモニーの中心にいたのは、他ならぬ彼だった。 (C) Getty Images

 まさにファインプレーと言える振る舞いが見られたのは、現地時間7月22日に本拠地アンフィールドで行なわれた優勝セレモニーにおいて、リバプールのレギュラークラスの選手たちが、次々にプレミアリーグのトロフィーを掲げていた時だった。

 特設されたステージ上で、1月の冬の移籍市場で加入するも、自身の納得する活躍ができなかったために歓喜の輪に入れずにいた南野拓実を、主将のジョーダン・ヘンダーソンは見逃さなかった。彼は日本代表の腕を引っ張り、舞台の中央へと行かせ、歴史的なトロフィーを掲げるようにと促したのだ。

 シーズン中、抜群のキャプテンシーでチームをけん引してきたヘンド(ヘンダーソンの愛称)は、自身にとっても最高の瞬間を楽しんでいる最中も周囲に気を配り、普段と変わらぬリーダーシップを発揮したのである。

 元来、ヘンダーソンは、試合の前後に長いスピーチをするタイプではなく、激情型でもない。だが、チームスピリットを植え付け、ロッカールームを一致団結させるうえで必要不可欠な存在だ。このイングランド代表MFがいたからこそ、リバプールは30年ぶりのトップリーグ制覇を叶えたといっても過言ではない。
 
 ピッチ外での貢献度は計り知れない。新加入選手やトップチームに昇格したばかりの若手がメルウッド(リバプールの練習場)での"生活"に馴染みやすいように、積極的に助言や手助けをし、クロップ監督のモットーといえる「軋轢や派閥のない」チーム作りを率先して実践。"新入り"をチームに溶け込めるように働きかけ続けた。

 無論、ヘンドが日々の練習時から全力でプレーして仲間を鼓舞する模範的なプロフェッショナルなのは、誰も知るところだ。その背中を見ているチームメイトも、誰も手を抜けないのだ。「ジョーダンは最高のロールモデルだ」とは、トレント・アレクサンダー=アーノルドの言葉だ。

「もちろん、みんなとジョークを交わしたりするし、すべてを真剣に考えすぎるわけではない。でも、いざピッチに立ち、その時点で、本気で練習や試合に取り組んでいない選手をヘンドは滅法嫌って、叱るんだ。これが怖いんだよ(苦笑)。

 サッカーを心の底から愛しているし、クラブとファンのことを常に念頭に置いていて、正しいサッカーで、最高の結果を導き出せるように最善を尽くしたいといつも考えている。この偉大なクラブの主将という役割の重責、そしてその意味を理解しているんだよ。主役になりたいなんて思っていないだろうし、黒子としてしっかりと仕事をする。そしてチームを正しい方向に導くことだけしか頭にないと思う」

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