【コラム】「カウンターで勝っても…」興味深いザーゴとポステコグルーの“共鳴”

2020年07月26日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

攻撃サッカーで観ている者を楽しませたい

内容の伴ったサッカーで勝利を目指す鹿島のザーゴ監督(左)と横浜のポステコグルー監督(右)。お互いのサッカー観は驚くほどシンクロしている。写真:田中研治

 驚くほど、両者の考え方はシンクロしている。

 横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督は、かつてこんな風に語ったことがある。「守備的に戦って、カウンターで1点を取って、1-0で勝利する。結果はいいとして、内容については嬉しくもなんともない」。

 7月25日のオンライン取材に応じた鹿島アントラーズのザーゴ監督も、自身のサッカー観について話すなかで次のように述べた。「ファン・サポーターからすれば、ただ守ってカウンター1本で勝ちましたというのは、勝ったことは嬉しいけど、たぶん、それは見ていてあんまり楽しくないと思う」。

 さらにポステコグルー監督は「サポーターも同じ気持ちだと思うのですが、監督としても、攻撃的なサッカーは観ていてワクワクするし、楽しい。そのうえで、勝ちたい」と強調すれば、ザーゴ監督も「パスをつないだり、選手がボールを持った時のいろんな技、技術を観るのが、サッカーを愛する者としては、一番の醍醐味」と力説する。
 
 同じような信念を持つ両者は、7月18日の5節で対戦。4-2の打ち合いの末、鹿島に軍配が上がる。横浜はいつもと同じように人数をかけて分厚い攻撃を繰り出したが、「自分たちのミスからボールを奪われて失点してしまったのが残念」とポステコグルー監督は悔しがった。ザーゴ監督はポゼッションよりも、ハイラインを敷く敵の最終ラインの背後にある広大なスペースに目を向け「つなぐよりも縦への意識が非常に重要だった。我々は違う"色"も出せる」と微修正を施して、チームは効率的かつ鋭いアタックを仕掛けて得点を重ねた。

 ふたりの指揮官に違いがあるとすれば、柔軟性の強弱だろう。もっとも、根底にあるのはリスクを背負ってでも攻撃サッカーを貫こうとするスタンスであり、観ている者を楽しませたいという想いだ。ポステコグルー監督が「内容にこだわっている。そこは絶対に譲れない」と主張すれば、ザーゴ監督はどれだけ負けがこんでも「やっていることは間違っていない」と言い張る。そんな頑固一徹なところも。
 

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