「彼が求めていたのは…」マドリーはなぜ有望株ハキミを手放したのか?【現地発】

2020年07月05日 エル・パイス紙

インテルはCLで対戦した時に注目

ハキミは7歳で下部組織に加入したマドリーをついに離れる決断を下した。(C)Getty Images

 レアル・マドリーの首脳陣は、常々アシュラフ・ハキミの課題はSBとしての守備面にあると考えていた。2年前にレンタル修行先にボルシア・ドルトムントを選定したのも、そうした思惑が背景にあった。しかし時に若者は想像を大きく超える成長を見せる。ハキミはドイツの地でサイドアタッカーとしての資質が開眼。今シーズン、45試合に出場し、9得点・10アシストの数字を残した。

 そしてこの活躍が決め手となって、この度、ハキミは移籍金4000万ユーロ(約50億円)+ボーナス500万ユーロ(約6億円)でインテル・ミラノへ移籍することが決定した。マドリーにとってはダニエル・カルバハルの後継者と目されていた期待のホープの想定外の流出である。

 インテルがハキミに着目したのは、今シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)グループステージ第4節のドルトムントとの直接対決だった。試合は2点ビハインドで前半を折り返したドルトムントが後半、ハキミの2発を含む3得点で逆転勝利を収めた。そしてこのパフォーマンスが敵将のアントニオ・コンテの脳裏に強く印象付ける結果となった。

 ハキミが次の移籍先にインテルを選択した重要なファクターの一つがその指揮官が採用する戦術だ。メインシステムは3-5-2で、サイドはウイングバックが攻守に一手に引き受ける。オープンスペースに侵入するプレーが持ち味のハキミ向きの戦術であり、逆にマドリーが軸とする4バックは守備の課題を露呈しやすい。
 
 このモロッコ代表の21歳は、2006年に7歳でラ・ファブリカ(マドリーのカンテラの愛称)に入団した。当初はFWだったが、カテゴリーが上がるにつれ右ウイング、サイドバックとポジションを下げていった。もっとも持ち場に関係なく持ち前の攻撃力を発揮し続け、それは後にカンテラ時代にしのぎを削り合ったボルハ・マジョラル(現在はレバンテにレンタル中)が「僕からポジションを奪う実力はあったよ」と冗談交じりに語ったほどだ。

 攻撃好きについては本人も自覚しており「僕はストライカーのマインドを持ったサイドバックだ」と公言している。しかしマドリーの首脳陣は、あくまでサイドバックとして育てる方針を見直すことはなく、そこで障壁となるのが不動のレギュラーのカルバハルの存在だった。「現状ではカルバハルを押しのけてプレーするのは難しい。しかもハキミは常時出場できる環境を求めていた」と、クラブ関係者もこう証言する。

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