【横浜FC】往年のバッジョのように――42歳の中村俊輔が観る者すべてを魅了する

2020年07月01日 サッカーダイジェスト編集部

工夫をこらしたメニューでコンディション維持に努める

6月24日、42歳となった俊輔。運動量は落ちているかもしれないが、抜群のテクニックと豊富なイマジネーションは健在だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 リーグ再開を直前に控えた6月24日、横浜FCの中村俊輔は42歳の誕生日を迎えた。誰もが予想だにしなかったコロナ禍によるリーグ中断。このかつてない長い非活動期間の影響は、若手より、俊輔のようなベテラン選手により重くのし掛かる懸念は確かにある。

 ただ、ことサッカーに関しては何より繊細で、自身の中で思慮を重ねるも、最終的にすべてを前向きに捉えて行動に移す俊輔だけに、個人的にこの中断はむしろプラスに働くように思う。いや、プラスに捉え、よりパワーを貯めて再開に備えているはずだ、と言ったほうがより正確か。

 指導者B級ライセンスを取得した2017年以降、チーム始動前の自主トレメニューはすべて自身で考案。それだけに、チーム練習がストップした自粛期間中も、長く痛めていた右足首を始めとする身体のメンテナンスはもちろん、工夫をこらしたメニューでコンディション維持に努めていただろうことは、容易に想像できる。

 プロ24年目の今シーズン。そもそも期待は大きかった。横浜FCへシーズン途中加入となった昨季は、自身プロ初の2部リーグでのプレーや、同じく自身初のシーズン途中移籍によるチームへのアジャストの難しさ、慣れないボランチでのプレーなど、常に前向きな姿勢を崩さなかったとはいえ、決して少なくない葛藤を抱えていた。その中でもJ1昇格というミッションを見事な適応力でクリア。4年ぶりとなる関東クラブで開幕を迎える今季は、それらの葛藤もすべてリセットし、また新たな気持ちで臨めたシーズンだったはずだからだ。
 
 そう長くはない残りの現役生活。何より大好きなサッカーを楽しみたいという気持ちも、最近は特に言葉の端々から伝わってくる。17年のジュビロ磐田移籍、それに伴う長距離の車通勤、そして昨季途中にカテゴリーを下げての移籍決断など、様々な経験を積んだことで、「もう何でも大丈夫」と、良い意味で肩の力が抜けたようにも感じる。

「もうカテゴリーはあまり気にしていないよ」。こう冗談交じりに話すこともある。一方で、「若手にはまだまだ負けない」と、内に秘めた闘志はもちろん不滅。当然ながらこれまでの積み重ねによって持ち合わすプライドと、そして無駄な力が抜けた精神面。そのふたつの均整の取れたバランスが、今の俊輔を支えているようにも思える。
 

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