【天野純インタビュー|後編】無念さを滲ませながらも「ベルギーでの経験が無駄ではなかったことを証明したい」

2020年06月05日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「マジで全然パスがこない(笑)」

移籍前は伝統の10番を背負っていたが、復帰後はクラブへの感謝の意味を込めて39番(サンキュー)を選んだ。(C)Y.F.M

 昨夏に念願の欧州移籍を果たした天野純は、新天地ロケレンで日を重ねるごとに、確かな手応えを感じていた。しかし、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響もあり、クラブの経営難や給料未払い、練習のボイコットなど予想外の事態が起き、ベルギーでの挑戦を断念することに。

 もっと上のレベルで勝負できる自信があっただけに、未練がないと言ったら嘘になる。それでも、悔しさを糧にして、天野は前を向く。そして、その言葉に力を込めて言った。「F・マリノスで優勝したい。連覇したい」と。

前編はこちら

――◆――◆――

――横浜への復帰は、簡単な決断ではなかったはずです。
「もちろん、いつかはF・マリノスに帰ってきたいと思っていましたけど、2~3年は向こうでやるつもりだったし、できる自信もあった。だから、ショックだったし、悔しかったですね。手応えを感じていたのに、選手としてのベルギーでの生活が終わってしまったので。ヨーロッパでどこまで上のレベルに行けるのか、もう少しチャレンジしたかった」
 
――納得はいっていないだろうけど、得難い経験だったとも思います。
「日本では、普段サッカーを見ている人には"天野純"という名前を少しは知ってもらっているかもしれないけれど、向こうでは、無名のアジア人になる。『誰?』みたいなところからのスタートになる。欧州に移籍した日本人選手には、最初はボールが回ってこないと聞いていたけど、本当にそうでしたね。マジで全然パスがこない(笑)。このアジア人には絶対に渡さない、みたいな感じなんですよ。でも、すぐに練習試合があって、そこでアピールできたら、認めてもらえるようになった。誰も助けてくれないし、自分の実力だけでのし上がるしかない。その厳しさと同時に、認められた時の嬉しさも強く感じましたね」

――初のヨーロッパの舞台で、一から信頼を勝ち取り、レギュラーの座を掴んだ。逞しく戦い抜いた自分を客観視すれば、新たな発見もあったのでは?
「でも、F・マリノスでも始めから上手くいっていたわけではなかったし、逆境から這い上がるっていうのは、ある意味、慣れているというか。だから、ロケレンでの最初のほうは、なかなか試合に絡めなかったF・マリノスでの1年目とか2年目に戻った感覚でした」
 

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