短期連載コラム『日本代表 隠れ名勝負』vol.6 ジーコジャパン時代のチェコ戦|EURO2004で4強入りする強豪から金星
2004年4月、日本代表は久保竜彦の決勝点でチェコを破った。(C) SOCCER DIGEST/Getty Images
ワールドカップやアジア最終予選、アジアカップやコンフェデレーションズカップといったメジャーな大会ではなく、マイナーな大会や親善試合においても日本代表の名勝負は存在する。ともすれば歴史に埋もれかねない"隠れ名勝負"を取り上げる短期集中連載。第6回は2004年、ジーコジャパン時代のチェコ戦を振り返る。(文●飯尾篤史/スポーツライター)
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日本代表の強化にとって、贅沢な時代だった。日韓ワールドカップからドイツ・ワールドカップまでの4年間に繰り出した海外遠征は、ワールドカップ予選やアジアカップ、コンフェデレーションズカップといった公式戦を除いても7回。敵地でルーマニアやハンガリー、イングランドやウクライナと対戦し、世界における現在地を確かめた。
インターナショナルマッチウイークにワールドカップ予選がびっしりと組まれ、欧州がUEFAネーションズリーグを始めた今となっては、夢物語のようだ。
そんなジーコジャパン時代の海外遠征において、とりわけ印象深いのが2004年4月に行なわれたプラハでのチェコ戦である。
2か月後のEURO2004でベスト4に進出する強豪から金星を挙げた事実もさることながら、ひとりのストライカーが放ったインパクトがあまりにも強烈だったのだ。
「ドラゴン」こと、久保竜彦――。
野性味溢れるレフティがブリュックナー監督率いるチェコの面々を唖然とさせるのは、32分のことだった。
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日本代表の強化にとって、贅沢な時代だった。日韓ワールドカップからドイツ・ワールドカップまでの4年間に繰り出した海外遠征は、ワールドカップ予選やアジアカップ、コンフェデレーションズカップといった公式戦を除いても7回。敵地でルーマニアやハンガリー、イングランドやウクライナと対戦し、世界における現在地を確かめた。
インターナショナルマッチウイークにワールドカップ予選がびっしりと組まれ、欧州がUEFAネーションズリーグを始めた今となっては、夢物語のようだ。
そんなジーコジャパン時代の海外遠征において、とりわけ印象深いのが2004年4月に行なわれたプラハでのチェコ戦である。
2か月後のEURO2004でベスト4に進出する強豪から金星を挙げた事実もさることながら、ひとりのストライカーが放ったインパクトがあまりにも強烈だったのだ。
「ドラゴン」こと、久保竜彦――。
野性味溢れるレフティがブリュックナー監督率いるチェコの面々を唖然とさせるのは、32分のことだった。
稲本潤一からのパスを右サイドで受けた久保が、ゴール目掛けてドリブルを開始する。目の前に現われたDFウイファルシを深い切り返しでかわし、中に切れ込んで左足を振り抜くと、弾丸シュートがチェコゴールに突き刺さる。これが、この試合の先制ゴールにして、唯一のゴールとなった。
トルシエ時代は14試合に出場してノーゴールだった久保だが、ジーコが監督に就任すると、代表チームにおける存在感を少しずつ高めていく。
04年2月のドイツ・ワールドカップ・アジア1次予選のオマーン戦では、終了間際にチームを救う決勝点をマークした。チェコ戦の3日前に行なわれたハンガリー戦でもDFの背後を取って同点ゴールを蹴り込んでいる。
欧州組を最上位とする選手選考によってチーム内に漂い始めた閉塞感に、久保はその左足で風穴を開けたのだ。