【J再開後の注目株|FC東京】左SB小川の対抗馬になりうるアカデミー卒のルーキー。スムーズな攻め上がりはまるで弾丸

2020年06月03日 後藤勝

もともとは攻撃的なタレント

19年のルヴァンカップ準々決勝で左SBに抜擢されると、驚くべき成長を見せたバングーナガンデ。写真:サッカーダイジェスト

 いよいよ7月4日からJ1リーグが再開する。すべての水曜日に試合を詰め込まずとも残り33試合を消化できる計算ではあるが、なんらかの事情で中止となる節が出た場合、その振替に使えるセッション数はそう多くはない。全日程を消化できずにシーズンの終了を迎える事態すら起こりうる。
 
 たとえ連戦であっても戦力を落とさずに戦い、3ポイントを奪っていかなければ、優勝は遠ざかってしまう。つまり固定された11人だけでタイトルを獲得するのは至難の業だ。これまで出場機会が少なかった中堅や若手の成長が欠かせない。

 今季、FC東京が採用している4-3-3は、個人能力の高い3トップにインサイドハーフやサイドバック(以下SB)が絡んでいくことで重層的な攻撃が可能になる。

 前線や中盤のタレントは豊富だが、ではSBはどうだろう。右に室屋成、左に小川諒也。この"鉄板"スタメン組の牙城を揺るがす存在はまだ出現していないのではないか。

 開幕戦でJ1初先発となった中村帆高にしても、ぶっつけ本番にしてはよくやったと、健闘をねぎらう段階。まだ先発を勝ち取るところまでは行っていない。

 昨年、J3で13試合に出場したバングーナガンデ佳史扶は開幕戦ではベンチに入るのがやっと、同じく昨年のJ3で21試合に出場した中村拓海はメンバー入りを果たせなかった。中村帆を含め、みな相応の才を有してはいても、これから実力を証明していかなければいけない位置にいることには変わりがない。だがここではこの3人のうち、あえてバングーナガンデを注目のひとりに挙げてみたい。
 
 怪我やアクシデントなどで、右の室屋よりも左の小川のほうが先発を外れやすい。中村帆が本職ではない左で開幕戦に先発したように、バックアップメンバーが起用される可能性は左のほうが高い。そこでバングーナガンデだ。

 昨季のオ・ジェソクのように左での守備を期待するなら中村帆。攻撃を期待するならバングーナガンデ。そこまでの公式を記すことは容易い。

 実際、弾丸のようなこのSBは、昨年のルヴァンカップ準々決勝2試合で小川の不在を感じさせないスムーズな攻め上がりを見せた。それはまるでFC東京U-18に戻ったとき、高校生には敵なしと思わせるドリブルで左サイドを割るように走り、次々にクロスを入れていく姿を再現するかのようだった。もともとは攻撃的なタレント。ユースの試合ではヘディングシュートを叩き込んでゴールを奪うほど得点のセンスもある。ポテンシャルは高いと見るべきだろう。
 

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