【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「戦力補強を終えて、ますます際立つ本田の存在」

2015年02月04日 マルコ・パソット

中央は元々のポジション、右もうまくいった、ならば左でも…。

アジアカップ敗退から間を置かずにミランに合流した本田。ここでもチームへの献身的な動きを見せたことで、彼への信頼度はさらに高まった。 (C) Getty Images

 恐怖心と不安でいっぱいのチーム、それが今のミランだ。
 
 自分たちの力を信じることができない。自信こそが、この終わりの見えない闇を抜け出す一番の方法なのだが、今の状況ではそれを持つことは難しい。こうして、負のループが続いている――。
 
 パルマ戦でのミランは、多くの中心選手を欠いていた。怪我が9人(その多くがDFに集中していた)、出場停止1人(フィリップ・メクセス)、さらに移籍画策中の者(パブロ・アルメロ)まで……一体、誰を頼りにしたらいいのか。
 
 そしてミランのロッカールームを見回した時、フィリッポ・インザーギ監督の目が止まったのは再び戻ってきた本田圭佑だった。
 
 本田は、とても彼らしい方法でまたミランに舞い戻ってきた。オーストラリアからの長旅にもかかわらず、ミラノに戻ったその足で練習場に直行。朝の8時にはすでにミラネッロには彼の姿があり、その1時間後にはランニングマシンの上を走っていた。
 
 時差ボケを早く解消するため、というのがその理由だったが、この行動はインザーギ監督に対する明確なメッセージともなった。俺はここにいる。ミランが必要とするならば、俺に任せてくれ、と。
 
 そして当時、リーグのラツィオ戦での手ひどい敗戦を受け、ミラネッロでは2日半の緊急強化合宿が行なわれていた。すると本田は家に帰ることなく、そのままミラネッロに残り――彼にはなんの落ち度もないのに――、このヘビーな時をチームメイトとともに過ごしたのだ。インザーギ監督が、何よりも本田を大切に思う理由がここにある。
 
 さて本田の不在中、彼と同じプレースタイルを持つアレッシオ・チェルチがミランに加入したことで、定位置をめぐる"対決"が予想されたが、箱を開けてみれば、そんなものは存在しなかった。やはり本田は、今のミランの支柱のひとつだった。本田がいるなら、まずピッチの上でプレーをさせる、ということだ。
 
 本田のポジションはこれまで同様、右サイド。チェルチは左でプレーさせればいいだろう――少なくともパルマ戦の前まで、インザーギ監督はそう思っていたはずだ。本田が右サイドに与えるバランスとメカニズムを捨て去るのは、あまりにも惜しかった。
 
 しかしパルマ戦の途中で、インザーギ監督はその考えを改めざるをえなくなった。というのも、チェルチが左ではまるで使えなかったのだ。そこで仕方なく、本田を左に、そしてチェルチを彼が得意とする右に移した。
 
 その結果、インザーギ監督は悟った。本田の方が、チェルチよりも新しいポジションに順応できると。言い換えれば、本田は攻撃においてはオールマイティーであり、どこのポジションでもプレーすることができるということだ。
 
 センターは彼の元々のポジションであり、右でもうまくプレーできることも今シーズンで証明された。ならば、きっと左でも……。本田のプレーのビジョン、順応性、そして自己犠牲の精神は、ミランにとって欠かせない重要なものだ。パルマ戦で副キャプテンを務めたのも、それだけの価値が彼にはあるからだ。

次ページ典型的なCFタイプのデストロを最も活かせるのは本田である。

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