11年前のCL決勝で見せたイニエスタの「ビッグプレー」と「隠れた闘争心」【現地発】

2020年05月20日 エル・パイス紙

彼にしかできないプレーで勝利に貢献

11年目のCL決勝で先制ゴールを演出し、ビッグイヤーを引き寄せたイニエスタ。(C) Getty Images

 ヨハン・クライフは生前、「どんなマイナスの事象においてもプラスの要素を見出すことができる」とよく口にしていた。このコロナ禍にある中で同じマインドを持つのは極めて困難であるが、フットボールファンがこの期間を有効利用できるものがあるとしたら、それは過去の名勝負を見ることだろう。

 もちろんノスタルジーに浸って悲しい気持ちにもなるし、幾度も繰り返し見るとマンネリ化にも陥る。ただ自身の意見を見つめ直し、深め、改善し、新たな考えを確立する良い機会になっているのは間違いない。

 先日、『モビスター・プルス』で放映された2008-2009シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)決勝のバルセロナ対マンチェスター・ユナイテッド戦を見た。バルサが2-0で勝利を収め、クラブ史上初のトリプレーテを達成したわけだが、終始優位に試合を進められたわけではない。ピッチ上で繰り広げられたフットボールの美しさという点では、2年後にウェンブリー・スタジアムで実現した同一カードの決勝(バルサが3-1で勝利)に及ばない。ただ、序盤に苦戦を強いられたが、そこから巻き返しを見せた反発力が、当時上昇気流に乗っていたチームの勢いを物語っていた。

 ただそうした試合展開は全て記憶に残っていた。わざわざテレビで再確認する必要はなかった。何人かの選手たちの貫録溢れるプレーぶりについてもそれは同様だ。
 
 アンドレス・イニエスタもそのひとりで、この大一番でも彼は彼にしかできないプレーで勝利に貢献した。とりわけ試合の流れを一変させた先制点をお膳立てしたアクションは、重要な局面でチームを救う働きを披露するイニエスタの真骨頂を見た気がした。

 序盤、相手の勢いに気圧され、バルサは攻めあぐむ時間が続いた。その時だった。イニエスタがビッグプレーを見せたのだ。ボールを受けると鋭い加速で相手選手2人を置き去りにし、絶妙なタイミングで前線のサミュエル・エトーにスルーパスを配給。カメル―ン人FWはネマニャ・ビディッチを鋭い切り返しでかわすや、つま先でシュートを放ちバルサが先制した。

 改めて認識させられたのが、劣勢に立たされていたチームに活力を与える力であり、エレガントなプレーをいとも簡単にこなす技術の高さであり、そしてCLの決勝という大舞台に動じずに、ワンプレーで試合の流れを変えてしまう気持ちの強さである。
 

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