「絶対にこれは譲れん」。2024年開業予定、新スタジアムの夢構想【広島|久保会長インタビュー後編】

2020年05月12日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「歩いても、杖をついても、もしくは車いすでも行ける便利なところがいい」

スタンドに集まる広島サポーター。彼らサポーターも、久保会長も、新スタジアムの完成を心待ちにしているだろう。写真:滝川敏之

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 クラブ経営を立て直し、下部組織強化のために充実の体制も整えた。そして次に、久保は熱い想いをかけている事業がある。

「サンフレッチェのサッカースタジアムをすぐに作りたい。いろいろあったんですけど、どうしても街中にスタジアムを作りたかった。郊外のシルバー世代は不便だからと都市部に移り住んでいるのに、なんでスタジアムは遠いほうに行かないといけないのか。歩いても、杖をついても、もしくは車いすでも行ける便利なところがいい。絶対にこれは譲れん」

 情熱は結実し、新スタジアムの建設地が広島市中心地の中央公園広場に決定。開業予定は2024年だ。

「近隣の平和公園から広島城までひとつのルートを作り、その一帯ができれば、ここは観光地になる。プラザとして賑わっていくんじゃないかなと思います」

 現在、サンフレッチェの会長であり、株式会社エディオンの社長でもある久保は、新スタジアム建設という明確な目標のために、大事なことも忘れてはいない。

「会社としても、メインスポンサーとしても、今後もサポートしたい。そのためには、本業の業績も伸ばして企業としても安定しないといけない。それを励みにしながら、本業と地域のクラブ事業も一緒になって育っていく。その考え方はしっかりと自分の中にある」
 久保はサッカーに携わり始めて20年以上が経つ。「サッカーに対する想いは変わってきましたか?」と聞いてみた。

「それは変わってきますよね、初めの想いとは。段々とこういうチームにしていきたいとか、あります。僕は地域に根付くとことが凄く大事だと思うんですよね。地域の人たちとともに育てて戦っていく。そういうふうな地域ぐるみで支えていくというチームを作っていきたいと思っています。

 小学校とか中学校にウチの選手が出向いてサッカー教室をやるとか、頻繁にやっているんですよ。そういうことをこれからもやって、地域に根付いたクラブとしてなくてはならない広島のサッカークラブとして、今まで以上に地域に貢献できればと思っています。その辺りは選手たちにも話をしていて、気持ちよくみんな行ってくれます」

 サンフレッチェの過去、現在、そして未来のビジョンを明かしてくれた久保は、「サッカーに縁のない男がサッカーにどっぷりつかってしまって、もう抜けれなくなってしまった(笑)。もう、広島で久保さんと言えばサッカーになってしまったね」と笑い飛ばした。人情味溢れる男のサンフレッチェへの情熱は、消えることはないだろう。

(文中敬称略)

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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