【アジアカップ】逞しさを増す韓国、55年ぶりの優勝に王手|準決勝 韓国 2-0 イラク

2015年01月26日 熊崎敬

ピッチの幅を生かしたダイナミックなサイド攻撃。

このイ・ジョンヒョプ(右)のゴールなどでイラクを下し、決勝進出を決めた韓国。主力の故障離脱というアクシデントを逞しく乗り越え、実に14大会ぶりの優勝に王手をかけた。 (C) Getty Image

 グループリーグからの連続無失点を5試合に更新。韓国がイラクを2-0で退け、1960年自国大会以来、実に14大会ぶり3度目の優勝に王手をかけた。
 
 グループリーグでは風邪が蔓延、さらにイ・チョンヨンにク・ジャチョルと攻撃の要が相次いで怪我で離脱するなど、これまでの道のりは決して平坦ではなかった。だが数々のアクシデントに見舞われながらも、韓国は充実の戦いを見せている。
 
 準々決勝と準決勝の間隔がイラクより1日多かったとはいえ、彼らは安定した試合運びで2007年の王者を退けた。
 
 球際での激しい攻防が続いた前半、立ち上がりこそミスからピンチを迎えたものの韓国は出足でイラクを上回り、次々とチャンスを創った。20分、キム・ジンスのFKをイ・ジョンヒョプが打点の高いヘッドで叩き込み、先制する。
 
 さらに50分には、高く舞い上がったボールをイ・ジョンヒョプが胸で落としたところにキム・ヨングォンが走り込み、左足ボレーを流し込む。このゴールで、勝負はほぼ決まってしまった。
 
 60分過ぎからイラクは交代を使って巻き返し、韓国は守勢に回った。だが、危ない場面はほとんどなかった。シュティーリケ監督は中盤の守りを固めながらも逆襲の形を崩さず、タイムアップの笛を聞いた。許した決定機はゼロ。完勝といっていい。
 
 主力ふたりを欠きながらも、韓国は試合を重ねるたびに逞しさを増している。それは今大会の韓国が、伸び盛りの若手が多いことと無縁ではないだろう。1990年以降に生まれた選手は日本の5人に対して、韓国は11人。そのだれがピッチに立っても、高い水準のプレーを見せている。
 
 延長戦にもつれ込んだ準々決勝のウズベキスタン戦では22歳のソン・フンミンがチームを救い、この試合ではオーストラリア戦に続いて23歳のイ・ジョンヒョプがゴールを決めた。
 
 日替わりでヒーローが出てくるあたりに、層の厚さが感じられる。特定の主力に頼らざるを得なかった、日本にはなかったものだ。
 
 ピッチの幅を生かした、ダイナミックな攻撃を展開する韓国。一人ひとりの縦を突く力は、目を見張るものがある。特にサイドバックが豪快に大外を駆け上がるとき、スタジアムは大歓声に包まれる。
 
 この韓国の攻撃を操るのが、ボランチのキ・ソンヨンだ。韓国の攻撃は、ほとんど背番号16を経由する。
 
 背筋をピンと張って前方を見渡し、左右両足から長短のパスを繰り出す。そのプレースタイルはエレガントで、ときには大胆に前線に攻め上がり、際どいシュートも放つ。将来の期待も込めて「韓国のベッケンバウアー」と呼びたくなった。
 
 伝統の勝負強さ、力強さはそのままに、キ・ソンヨンに象徴される独特の閃きを備えた2015年版韓国。仮に無失点のまま頂点に到達したら、4試合で一度もゴールを許さなかった1976年大会のイランに続く快挙となる。
 
取材・文:熊崎敬

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