【番記者コラム】記憶に残る新潟の躍進を生んだ2度の“大転換”

2020年05月03日 大中祐二

前年から一転、マンツーマンの守備を徹底

12年は創設以来初となるシーズン中の監督交代を契機にチームが結束。ゴール前を固めるしぶとい守備などで、最終節に大逆転でJ1残留を決めた。写真:田中研治

 2013年の新潟の快進撃を生んだ、2度の"大転換"が忘れられない。それはいずれも、守備における大いなる変化だった。

 17位で迎えたリーグ最終節に2チームを抜き、奇跡のJ1残留を果たしたのが前年のこと。翌年の躍進を、いったい誰が予想できただろうか。
 12年シーズン途中からチームの指揮を執り、残留へと導いた柳下正明監督にとって、新潟では初となる13年のプレシーズンキャンプ。突如として指揮官は、徹底したマンマークの守備を導入する。

 対人のトレーニングで、守備側の選手は、目の前の相手のボールをつつけるくらいまで近づくことが要求された。全部が全部、「そこでボールを奪い取れ」というわけではなかった。だが、大胆なまでに間合いを詰め、人に付いていく守備の浸透が図られた。

 前年は、苦しい残留争いが続いた。6月からチームを率いた柳下監督は、ゴール前を固め、粘り強く守る選手たちを見て「みんな苦にしないんだよね。感心するよ」と、冗談交じりに語りながら、忠実なプレーぶりを評価。やりたいことは封印し、対戦相手の強みと弱みを分析し、相手に合わせる戦い方で勝点を積み上げ、残留を果たした。

 翌年、キャンプでの人にタイトに付く守備の意識付けは、失点しないためにゴール前にへばりついていた選手たちを、そこから引きはがす効果があった。

 13年のチームには、前年、期限付き移籍したJ2の岡山でリーグ2位となる18得点を挙げた川又堅碁が復帰。浦和から加入した田中達也、鹿島から加入した岡本英也らと2トップを組む川又は、その得点感覚を、J1でも徐々に発揮していく。

 さらにチームの動力源となったのが左サイドで、MF田中亜土夢、DFキム・ジンスの縦関係は、前年の苦しい戦いを通じて熟成されていた。さらに中盤では新加入のレオ・シルバ、成岡翔が、技術と経験に裏打ちされたプレーで全体をコントロール。序盤こそ連敗を喫し、初勝利は5試合目とスロースタートながら、その後、しぶとく勝点を重ねていった。
 

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