「少しずつ、少しずつ」。指揮官や首脳陣の過去の言葉から紐解く“甲府が変わろうとしている理由”

2020年05月01日 サッカーダイジェスト編集部

「昔に比べたら年俸の桁がひとつ多い」(佐久間GM)

今季、甲府で2年目を迎える伊藤監督。転換期にあるチームを高みに導けるか。写真:徳原隆元

 甲府は今季、大きな転換点を迎えている。ベテランから若手へ、堅守最重視からポゼッションを高めたより攻撃的な戦いへ。新型コロナウイルスの影響でリーグが中断し、出鼻をくじかれた形になってはいるが、今年が変革の一年であることに変わりはない。

「選手の保有数を減らし、世代交代を図って若手選手の出場機会を創出する」。佐久間悟GMは1月の新体制発表で明確な指針を示した。新体制発表時の平均年齢は26.6歳。30代の選手も13人から6人へと大幅に減った。

 これまでの甲府は経験豊富で計算ができるベテランを補強、重用し、堅守をベースに前線に強力な外国人アタッカーを置いて戦ってきた。それはJ1というステージにしがみつくためのひとつの選択であり、20億に届かないJ1最低規模の年間予算で2013~17年の5年間、トップステージに残り続けるという結果を残した。
 一方、佐久間GMが「能力の高い外国人選手は年々、獲得が難しくなっている」と語るように"一点豪華主義"とも言える強力な助っ人に頼った戦いは、J1を戦う間に難しさが増した背景もある。多くのクラブがスカウティング網を張り巡らせ、仲介人が目を光らせているなかでは「昔に比べたら年俸の桁がひとつ多くなっているような状況」(佐久間GM)。

 J1にいる間に甲府の年間予算は10億円台後半で頭打ちとなり、現在はJ2でも中位から下位の間となる14億円前後。限りある予算は必然的に編成への制限という形に表われてくる。つまり、年俸が高いベテランからより費用が抑えられる若手にシフトするのは当然の流れとも言える。

 クラブは世代交代とともに、ピッチでの変革にも乗り出した。17年の吉田達磨監督の就任は堅守速攻からの脱却が大きなテーマにあり、チームが変わろうとしている意思表示でもあった。ただ、その年にJ2降格、18年はシーズン序盤から結果が出ずに吉田監督が退任。結果と改革の両立の難しさが浮き彫りとなったなかで、昨年から伊藤彰監督体制がスタートした。

 伊藤監督は昨年「少しずつ、少しずつ。急激に変えればチームは崩れてしまう」という言葉を何度も口にした。18年にはヘッドコーチを務めていた指揮官は、結果を残すことで変革するための時間が生まれるということを理解していたようだった。

 クラブの編成も19年は内容よりも結果を優先した形になった印象が強く、改革からの揺り戻しの感があった。J1にとどまり続けたチームの形を変えることは簡単ではなく、3歩進んで2歩下がるという地道な積み重ねが続けられている。

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