「ネガティブな意味で驚きしかない」プレミアリーグは6月8日に再開できるのか? 英国人記者が探る可能性【現地発】

2020年04月27日 田嶋コウスケ

再開できなければ、経営破綻するクラブが出てきても…

イングランドにサッカーが戻ってくるのはいつになるのか? ノースクロフト記者の見解は――。 (C)Getty Images

 新型コロナウイルスの感染拡大により、3月13日から中断中のプレミアリーグ。現時点で再開時期は未定で「無期限の中断」となっている。

 ところが、プレミアリーグが水面下で6月8日のリーグ再開を目指していると報じられた。ここから1か月半で未消化となっている92試合を終わらせ、7月27日を最終期限として今シーズンのリーグ戦を消化したい考えのようだ。

 来シーズンの開幕は、8月22日に設定しているという。プレミアリーグ側はこれらの案を英国政府の担当部署に提出し、協議を進めている。なお、再開には政府の承認が必要だ。
 
 英国でも新型コロナウイルスは猛威を振るい、4月25日の時点で感染者14万8377名、死者の数は2万732名と2万人を超えた。ただし、この数字は病院で亡くなった人のみをカウントしたもので、8000名以上(4月21日時点)とされるケアホームでの死者は含まれていない。国家の非常事態であり、3月23日に始まったロックダウン(都市封鎖)も5月7日まで延長されている。本稿執筆時の状況としては、ここからロックダウンを段階的に緩和できるかどうかの瀬戸際にある。

 一方、プレミアリーグとしては、なんとしてでもリーグ再開にこぎつけたい。最大の理由は財政面だ。今季の日程を消化できなければ、テレビ放映権として7億6200万ポンド(約1015億円)の損失を被る。さらに、観戦チケットやグッズ販売などの試合日収入、全日程を消化できないことへのスポンサー契約の賠償金を合わせると、リーグ全体で総額11億3700万ポンド(約1514億円)の損失が生じるという。再開できなければ、経営破綻するクラブが出てきてもおかしくない。

 では、プレミアリーグは6月8日から再開できるのか。英紙サンデー・タイムズで健筆を振るうジョナサン・ノースクロフト記者は、「率直に言えば、プレミアリーグが6月8日から再開することになれば、ネガティブな意味で驚きでしかない」という。第一の理由は、選手の安全面だ。

「複数の選手に話を聞いたが、彼らは一様に心配している。無観客試合といっても、ピッチ上での接触プレーは避けられない。大声で指示を出したり、競り合いながら全力でボールを追いかけたりすれば、飛沫感染の恐れも出てくる。当然、人との距離を2メートル取るソーシャル・ディスタンスのルールは完全に無視される。未曾有の事態であり、私も断言することはできないが、英国の感染状況から言えば、サッカーを行なうのは8月以降にならないと難しいのではないか」
 
 6月8日からの再開が難しいとする2つ目の理由が、準備期間の短さだ。同記者は再開までのトレーニングとして「4週間は必要」と語る。

「親交のある監督やスポーツ科学者の話では、『再開までの準備期間として4週間は必要』だという。プレミアリーグは3月13日から中断となり、選手たちは1か月以上も実戦から離れている。当然フィットネスレベルは落ちており、身体を仕上げるのに4週間は必要だろう」

 6月8日の4週間前となると、5月10日から全体練習を再開しなければならない。本稿執筆時点でロックダウンは5月7日までとなっているが、緩和といってもおそらく段階的に進められるだろう。サッカーチームの全体練習がここに含まれるかは予測できない。
 

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