「ピピは洗礼を浴びている」マドリーの16歳・中井卓大は過酷な生存競争を勝ち抜けるのか【番記者レポート】

2020年04月14日 セルヒオ・サントス

スタメンはわずか8試合

マドリーに加入して6年目となった中井。現在はフベニールCで研鑽を積む。(C) SOCCER DIGEST

 レアル・マドリーのカンテラ(下部組織)でプレーする16歳の中井卓大にとって、今季は試練のシーズンとなっている。

 ピピ(中井の愛称)は、チームとしての形態も所属するリーグのレベルもプロと言っても差し支えない「カスティージャ」にステップアップする前の最後のカテゴリーである「フベニール」1年目の今シーズン、Cチーム(主に2003年生まれで構成)でプレーする。活躍が認められれば、フベニールB(2002年世代)、あるいはフベニールA(2001年世代)と上の世代のチームの試合にも出場する可能性を得るが、ピピはその機会に恵まれないばかりか、Cチームのレギュラーに定着することもできていない。

 新型コロナウィルスの感染拡大でリーグ戦が中断するまで、マドリーのフベニールCは23試合を消化。そのうちピピは14試合でプレー、うちスタメン出場は8試合しかない。M得点もわずか2点だ。

 21勝1分け1敗で首位に立ち、3ポイント差をつけている2位のラージョ・バジェカーノを除いて3位(24ポイント差)以下を大きく引き離しているマドリーは、ここまで108得点を叩き出し、1試合当たり4.7点と大勝する試合が珍しくない。そのチームにあって、MFとはいえ攻撃的な選手としてこの数字は寂しいと言わざるを得ない。
 
 チームスタッフのひとりは、今シーズンのピピをこう評価する。

「いいパフォーマンスを見せた試合もあったが、その大半は格下が相手だった。力の差が拮抗した相手では、ベンチスタートが常だった」

 その大きな原因となっているのが、フィジカルコンタクトだという。

「フィジカルの弱さが一番のネックになっている。上背があるのは魅力だが、球際の強さをもっと高める必要がある。フベニールCが所属するプリメーラ・アウトノミカは地域リーグで、レベル自体は高くはない。しかし相手チームは2歳年上の選手が大半で、当然身体の成長が早い。ピピはその意味でフィジカルの差という洗礼を浴びた格好だ。ただ才能は間違いなくある。あとは試合をこなすことで、アグレッシブさを磨いていくことがポイントになる」

 過酷な生存競争を強いられるマドリーのフベニールの選手たちはシーズンが終わると、ふるいにかけられる。フベニールCからは毎年30~40パーセントの選手が構想外を宣告される。とりわけシーズン終盤は、ピピのようにアピールが不足している選手にとっては極めて重要な時期だが、既述の通り、リーグ戦は中断されてしまった。

【動画】見事なドリブルから左足でゴラッソ!中井卓大のフベニール初ゴールはこちら!

次ページ現状の立ち位置は「ボーダーライン上」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事