「1ミリも対抗できなかった」エース岩渕真奈も認めた完敗…なでしこJに渦巻く失望感のもとは何なのか?【現地発】

2020年03月06日 早草紀子

岩渕の同点弾で粘りを見せるも後半にミス絡みで失点を繰り返す

五輪前最後の国際大会で初戦黒星スタートとなったなでしこジャパン。2戦目以降の巻き返しはあるのか。写真:早草紀子

 右後方からのクロスボール――バウンドさせていたのではシュートのタイミングがズレる。ダイレクトで触れるギリギリのポイントへ伸ばした右足が蹴り込んだボールは、GKの頭上を越えてゴールに吸い込まれていった。岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)は自身のシュートの軌道をジッと追う。ゴールネットが揺れたのを見届けると両手で小さなガッツポーズを作った。これが日本唯一のゴールだった。

 なでしこジャパンは6日、オリンピックを前に最後の国際大会となるシー・ビリーブス・カップ(アメリカ)の初戦でスペインと対戦。立ち上がりに完全に日本の左サイドを崩される形で失点を喫したが、エース岩渕の同点ゴールで折り返す粘りを見せた。ところが、後半にミス絡みで失点を繰り返し、終わってみれば1-3の惨敗に終わった。

「1ミリも対抗できずに負けちゃったな」。同点ゴールを挙げた岩渕の表情は冴えなかった。エースとして苦しい局面を打開する一発を決めてきた岩渕。この試合でも日本は苦しい展開に陥っていた。素早いチェックと球際の強さを押し出しながら、テンポよくパスを回していくスペインに対し、日本は後手に回り続けた。立ち上がりから中盤での攻防は劣勢。この状況を打破しようと、後半は守備意識を変えることを選手同士で確認する。

 その変化が岩渕の立ち位置だ。FWとしてはよりゴールに近い位置でボールをもらいたいが、スペインのスピード豊かな攻撃を抑え込むにはFWから一枚落ちて守備に加わることが最善の策とされた。岩渕はひとつポジションを下げるようにして献身的にプレッシャーをかけ続けた。その甲斐あってか、失点を重ねながらもピッチ内は落ち着きはじめたが、当然岩渕がゴールを窺う時間帯は激減した。膠着状態を切り抜けようとミドルシュートを放つのが関の山。77分に交代するまで、この状況を打破することは出来なかった。

 シーズン真っただ中のスペインに対し、日本はシーズン開幕前というコンディションの差は当然ある。この時期に参加する国際大会では常に痛感するが、それを差し引いてもこの初戦は少なからず失望感を覚えるものだった。コンディションや戦術以前に、球際でほぼ勝機を逃していた。そして、及び腰になり、あり得ないパスミスを連発する。スペインはそれを見逃してくれるほど甘くはなかった。
 

次ページ残り4か月の間に、ピッチ上での舵取り役を生み出さねばならない

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