小野伸二の琉球加入効果。“下から目線”の声掛けで特長を引き出し、さらなる向上心を導く

2020年02月22日 塚越 始

「伸二さんの掛けてくれる声が『上から』っていう感じが全然ないんです」

今季でプロ22年目を迎える小野。代名詞のベルベットパスは健在だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 小野伸二が北海道コンサドーレ札幌からFC琉球に移籍したのが昨年8月だった。まだ半年、もう半年。深みのある琉球レッドのベンガラ色もすっかり板につき、シーズン開幕から「琉球の小野伸二」として、2020シーズンに臨む。昨季はJ1クラブライセンスを取得した。J1昇格へ、チームとしても本気で挑む1年になる。

 昨季終盤のことだが、小野の加入効果について、とても興味深い話を聞くことができた。

 まず、プロ10年のキャリアを越えた32歳のDF福井諒司は、8歳上の小野のその「声」に心を動かされたという話をしていた。

「技術はもちろんですけれど、伸二さんの掛けてくれる声が『上から』っていう感じが全然ないんです。一人ひとり、それぞれの気持ちを考えてくれている、それぐらい柔らかい物腰と言いますか。やっぱり、そう言ってもらえると、『なるほど、ちょっとやってみようかな』と、そういう気持ちにさせてくれます」

 小野によって、周りの選手の特長や魅力がより引き出されていく。そのプロセスの一端が垣間見える。確かにそれでプレーが上手くいけば、選手も自信を得る。小野のピッチ上での振る舞いやパスから、その"人柄"を感じ取ることもできる。 

 昨季からキャプテンを務める沖縄県宮古島出身の上里一将は、小野とボランチを組む機会が多く、その時のチームのポゼッション率は確かに高い。加えて二人から四方八方へ精度の高いキックが届き、チャンスを作り出していたのが印象的だった。

「伸二さんがいることでのいい部分は、もちろんたくさんあります。あとは周りで補い、声を掛け合いチームとしてカバーしていきたい」

 昨季琉球がJ1クラブライセンスを取得したことを踏まえ、上里はこんなことも言っていた。
「沖縄が盛り上がるには、伸二さんが来ただけでなくて、勝たないとサポーターは増えてくれない。クラブがJ1ライセンスを取ってくれたので、もっと上へ行けるように、責任を持ってプレーしていきたい」

 上里は続けた。
「ウチが失点する時は、ボールが止まったら頭も休ませてしまっている状況が多い。ふっと抜けることがあるので、そこは厳しく言っています。徐々に失点は減ってきていますが、まだまだ。休む時間が多く、休んで喋らなくなったりすることが多い。毎回、後ろの選手は僕に怒られながらやっています」

 身体は休ませても、頭は休ませるな。それをチーム全体に浸透させようとしている。上里のそんな言葉からも、さらなるプロフェッショナルな集団になろうとする――小野加入効果が感じられた。 
 

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