リーガで3位と大躍進!“雑草軍団”ヘタフェの強さの秘密――なぜパス本数がリーグ最低でも勝てるのか?【現地発】

2020年02月15日 エル・パイス紙

「1部の監督としては格が低い」

ハードワークで敵の攻撃を潰していくのがヘタフェの真骨頂だ。(C) Getty Images

 フットボールはデータを通して各チームのプレースタイルの特徴を解き明かすことができるが、ヘタフェほどその検証の価値が高いチームはないだろう。

 特筆に値するのは、世界的にはほとんど無名の選手ばかりで、快進撃を演じていることだ。敵地で難敵を0-2で下したラ・リーガ22節のアスレティック・ビルバオ戦のスタメン11人を獲得するために、クラブが投じた移籍金の総額はたったの2345万ユーロ(約29億円)。その中には、ダミアン・スアレスやシャビエル・エチェイタのようにフリートランスファーで移籍してきた選手もいれば、マルク・ククレジャやデイベルソンのようにレンタル加入組もいる。

 ベンチメンバーにもアンヘル・ロドリゲス、ホルヘ・モリーナ、ダビド・ティモール、レアンドロ・キキソラと移籍金ゼロで加入した面々が名を連ねた。近年、移籍市場が高騰の一途を辿っているなか、資金的な制約を乗り越えて身の丈に合ったチーム作りで結果を残すヘタフェの快進撃は、昨今のフットボール界の風潮への強烈なアンチテーゼになっている。

 このヘタフェのプロジェクトを支えているのがアンヘル・トーレス・サンチェス会長とホセ・ボルダラス監督だ。前者は2部と2部B(実質3部)に所属する全選手に関する情報を網羅しているとの噂があるが、新加入選手の活躍を見れば、あながち大袈裟ではないかもしれない。

 しかしいくら綿密なプランを練って補強を敢行しても、獲得した選手の能力を最大限に引き出す指導者がいなければそれこそ絵に描いた餅だ。そしてその任務を素晴らしい成果とともにやり遂げているのがボルダラス監督なのだ。
 
 ボルダラスがヘタフェの監督に就任したのは今から約3年半前。その前シーズン2部に降格したチームはファン・エスナイデル監督の下で18位に低迷していた。それが監督交代を境に巻き返しを見せ、その勢いのまま1部昇格を果たすのだ。

 ちなみにボルダラスにとっては2年連続の昇格であったが、その最初のクラブ、アラベスはシーズン終了後にこの指揮官との契約を更新しなかった。理由は1部のチームを率いる監督としては、格が低いというものだった。

 結果的にヘタフェで監督として1部デビューを果たすわけだが、1年目に8位でフィニッシュすると、昨シーズンは5位でヨーロッパリーグ出場権を獲得。そして今シーズンはここまでチャンピオンズ・リーグ出場圏内の3位と大躍進。まさにホップ・ステップ・ジャンプの飛躍を遂げている。
 

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