U-23日本代表の“希望”となる2人のアタッカー【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2020年01月15日 小宮良之

どんなシステムでも競争に割って入れる

今大会で1ゴールずつを挙げている相馬(左)と食野(右)。不甲斐ない結果に終わったチームのなかで存在を示した。写真:佐藤博之

 グループステージでの敗退が決まった「AFC U-23選手権」だが、U-23日本代表は希望の光も示している。

〈ペナルティーエリア近くで勝負を仕掛け、ゴールに向かってプレーする〉

 攻撃の旗手となるべき、二人のアタッカーの存在があった。

 一人は、サウジアラビア戦で得点を決めた食野亮太郎だろう。

 食野はサイズの小ささが嘘のように、ドリブルに迫力がある。相手が守りを固めていても、わずかなスキを見出し、斬り込める。ドリブルがドリブルで終わらず、ゴールを視野に入れている。サウジ戦の得点も、とにかく右足を振りぬいたことで、シュートが相手に当たってコースが変わり、ゴールに入った。

 2シャドーの一角としてプレーするが、トップ下、もしくは2トップの一角でサイドアタッカーやボランチと連携すれば、さらに怖さは増すのではないか。ゴール近くの高い強度のプレッシャーがかかる場所でもボールを持て、前に進められる。スコットランドのハーツでプレーするようになって、その凄みは磨かれた。

 そして、もう一人はシリア戦でゴールを叩き込んだ相馬勇紀(鹿島→名古屋)だ。
 
 相馬はサイドアタッカーとして、その価値を示している。ゴールに近づくほどに、怖さを与えられる。小柄ながら体は強く、とにかく俊敏で、高い技術を誇る。相手が守備の陣形をこじ開け、自らボールを運べる。勝負の天秤を傾けられるアタッカーで、フィニッシュも振りが速く、腰が据わっている。シリア戦は一度シュートを打ってブロックされるも、跳ね返りを強烈に打ち込んだ。

 シリア戦は左ウイングバックとしてプレーしたが、左サイドアタッカーとして"逆足"(利き足と逆のサイドでプレー)でプレーするのも一つの選択肢だろう。カットインし、ゴールを狙えるだけでなく、コンビネーションを使い、縦に抜け出てクロスも上げられる。ディフェンスにとっては、機動力があって選択肢も絞れないだけに、頭の痛い選手だ。

 日本サッカーは、二人のように小さいが速くて上手いアタッカーを多く擁している。中島翔哉(ポルト)、堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)、安部裕葵(バルサB)などの新鋭が激しく台頭。ロシア・ワールドカップで活躍した乾貴士(エイバル)、香川真司(サラゴサ)、原口元気(ハノーファー)も、すでに代表のファーストオプションではないほどだ。

 食野、相馬はどんなシステムであっても、この競争に割って入れる力を示している。若い二人が、これからどう化けるのか。その楽しみができたことは、日本サッカーの強化において朗報と言える。

 1月15日のカタール戦は、すでに消化試合になった。モチベーションの意地は難しい。勝っても虚しさは残る。しかし、東京五輪につながる戦いであることは間違いなく、反発力を見せられるか。それも成長、進化につながる。

 とりわけ食野、相馬の二人にとっては、今後の試金石となるはずだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 
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