「『絶対にタイトル獲るよ』って思ってない」個性派集団を率いる静岡学園の川口修監督の真意とは――【選手権】

2020年01月07日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

「(選手権を)目指しているわけではないし、目指していないわけではない」

「まだ納得していない」とチームに発破をかける川口監督。高い要求を突き付けるワケとは? 写真:田中研二

[高校選手権準々決勝]徳島市立0-4静岡学園/1月5日(日)/駒沢陸上競技場

 試合後、静岡学園の川口修監督は、「結果は出てるんだけど、内容的には僕らスタッフは納得していない。非常にイージーミスが多い」と言い放った。意外な言葉だった。

 岡山学芸館との1回戦でいきなり6-0の大勝を飾った静岡学園は、4試合を終えて15得点をマーク。失点もいまだゼロだ。堅守を誇る徳島市立との一戦でも序盤から相手を圧倒し、怒涛のゴールラッシュで23年ぶりの4強入りを果たした。

 一見すると非の打ち所がない戦いぶりを見せている静岡学園だが、「技術的なミスが非常に多い。それを改善したい」と川口監督は満足することはなかった。事実、徳島市立戦も4点のうち2点はCKからであり、チーム全体がかみ合ってコンビネーションで相手の堅牢を打ち崩したというシーンは数えるほどしかなかった。

 だからこそ、指揮官は強く訴える。

「本当に良いリズムの時はもっと崩すバリエーションが多いし、もっとみんな仕掛ける。今日は前半のうちに3点決まってセーフティーになったのは事実。だけど、僕らのイメージだと、もっと学園らしくテクニックを使ったサッカーができる。そこが物足りない部分なんです。もうちょっと中盤のところで技術とアイデアで違いを出せる選手がいると、もっと面白いサッカーになる」

 川口監督が、高い要求を選手たちに突き付けるのは、理由がある。単に24年前に全国制覇(両校優勝)に導いた井田勝通前監督が築いたテクニックとインテリジェンスを重視する伝統のスタイルを踏襲したいからというわけではない。選手たちの"その先"を見据えているからだ。

 静岡学園が最後に選手権でベスト4に入った1997年から井田前監督の下でコーチになった川口監督は、「うーん。表現の仕方が難しい」と悩みながら言葉を紡ぎ出した。

「僕らは(選手権を)目指しているわけではないし、目指していないわけではない。難しいんですけど、『この選手権で絶対にタイトルを獲るよ!』っていう感じでは正直やってない。良い選手を育てて、代表に送り込む。そして、静学の選手にヨーロッパのクラブチームでプレーしてもらいたいっていう想いが僕はあります」

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