「プラン通りだった」全国“0勝”の鵬学園は、いかにして夏4強の優勝候補・京都橘を打ち破ったのか?【選手権】

2020年01月02日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

県予選決勝とは違うシステムを採用

試合終了間際に坂本が値千金の同点弾。流れは鵬学園に傾いた。写真:田中研治

 驚きのアップセットが起きたのが、全国高校サッカー選手権2回戦、ゼットエーオスプリスタジアムの第1試合だ。

 全国大会でまだ1勝もしたことがない鵬学園が、今夏のインターハイで4強に入り、優勝候補の一角にも挙げられていた京都橘をPK戦の末に破ったのだ。

 梅村脩斗と梅津倖風の2トップにMFの佐藤陽太(いずれも3年)など、タレントがずらりと揃う京都の雄に対し、名門・星稜を石川県大会決勝で倒して3年ぶり2度目の出場を果たした鵬学園は、その試合で用いた4-4-2ではなく、京都橘対策として4-3-3を採用。インサイドハーフの島田凌(3年)と水陸也(2年)が、4-4-2の京都橘のセントラルMFコンビ、佐藤と志知遼大にプレッシャーに掛ける作戦に出る。

「ある程度うまくいったと思う」と赤地信彦監督が語ったように、まずパスの出所を潰すことに成功した。

 実際、敵の司令塔である佐藤は、「相手のシステムが予想と違っていたこともあり、とくに前半はパスが上手く回らなかった」とこぼした。

 さらに、ターゲットマンとなる梅津を徹底マーク。その11番が「ボールを収められなかった」と悔やんだように、前線で基準点を作らせなかった。

 それでも、京都橘の攻撃は強力だった。注目選手のひとりだった髙木大輝の突破からピンチを招き、梅村に何度も際どいシュートを打たれるも、GK前原瑞穂(3年)の好セーブやポストに救われ、前半を0-0で凌ぐ。

 後半14分にCKのこぼれ球を詰められ、先制を許すと、直後にMF鈴木嶺騎(2年)を送り出し、徐々に攻撃型にシフト。その5分後には、1トップの前田に代えて、"切り札"のFW坂本健太を投入する。

「いけるところまで前田に頑張ってもらって、勝負どころで坂本に代えるのはプラン通りだった」(赤地監督)

 さらに70分、MF高戸祐也に代えてFW判治海斗を入れて、システムを4-4-2に変更。シンプルに2トップにボールを送り込む策で相手を押し込むと、終了間際の後半40分、直前に決定機を外していた坂本が「1本打って気持ちが落ち着いた」と左足のワンタッチシュートをネットに突き刺し、値千金の同点ゴールを挙げる。

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