【神戸】不意に流れた涙。クラブと苦楽を共にしてきた小川慶治朗が感じた悲願の初タイトルの喜び

2020年01月01日 本田健介(サッカーダイジェスト)

「これまで所属した人たちの貢献は決して忘れちゃけない」

優勝をチームメイトと喜ぶ小川(写真中央)。クラブとともに初タイトルを獲得した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[天皇杯決勝]神戸2-0鹿島/1月1日/国立

 鹿島との天皇杯の決勝を2-0で制し、悲願の初タイトルを獲得した神戸で喜びを噛みしめている男がいた。

 それはアカデミー育ちで、2011年にトップ昇格して以降、一時、湘南にレンタル移籍したとはいえ、通算9年、神戸に所属し、クラブ伝統の13番を長年背負ってきた小川慶治朗である。

 決勝戦はベンチ入りしたが、最後まで出番は訪れなかった。だからこそ、悔しさも感じていたという。しかし、試合終了のホイッスルとともに、自らも驚くような変化があったという。

「言葉にするのは難しいですが、試合に出たかったという悔しさはやっぱりあったんです。でもそれと同時に自然に涙が出てきちゃったんですよね。ああ、やっぱり嬉しかったんだなと。身体が自然に反応したんだと思います」

 今でこそ、アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャ、ルーカス・ポドルスキらを擁し、リーグで注目されるチームになったが、神戸は2度のJ2降格を経験するなど苦難の歴史を歩んで来た。

 ジュニアユースから神戸で育ってきた小川は、その歩みをすぐ近くで見てきた稀有な存在であり、だからこそ期する想いがある。

「いろいろあったクラブで、難しい時期もありました。でも一緒に戦ってきた仲間と乗り越えてきた。だから優勝できた時に一緒にこれまでやってきた仲間たちの顔が頭に浮かびました。今回の優勝は今までクラブを支えてきた人たちがいてこそ。今、チームにいる選手が本当に頑張りましたし、ファンサポーターの声もすごく力になりました。ただこれまで所属した人たちの貢献は決して忘れちゃけないですし、感謝しなくちゃいけないと思います」
 そういったかつての仲間たちからは、大一番を前に力をもらったとも話す。

「まだ神戸にいる人たちとは一緒にご飯に行って激励してもらいましたし、試合前にも頑張れよと連絡をもらえました。いまだに神戸を気にしてくれている人、そして僕を応援してくれている人は多くいます。相当に気持ちは昂りました」

 その想いはピッチの上で表わせなかったとはいえ、小川のような存在がいることがチームにとって大きなプラスになるはずだ。

 スタジアムを引き上げる前には「タイトルを獲って、その後がダメなシーズンになることだけは絶対にやってはいけないですし、今後、神戸が強くなるために連続してタイトルを狙いたい。1年を通じて今日のような戦いをしたいです」と、新たなシーズンへの意気込みを口にした。

 激しいレギュラー争いは「触発される」と臨むところだ。神戸の13番が初タイトルを手にしたチームで今後、どんなプレーを見せてくれるのか注目したい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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