草津東が過去2大会の悔しさを晴らす初戦突破! 勝利の立役者となったエース・渡邉颯太が乗り越えた困難【選手権】

2019年12月31日 遠藤孝輔

まさに“雲外蒼天”! 見事に窮地を脱し2回戦へ!

2ゴールの活躍で勝利の立役者となった渡邉。写真:早草紀子

 雲外蒼天─―。

 困難を乗り越え、努力して克服すれば、よいことが待っているという意味だ。この四字熟語をテーマに掲げる草津東(滋賀)の想いが、雲一つない晴天に恵まれた大晦日の味の素フィールド西が丘で結実した。第98回全国高校サッカー選手権1回戦で、東久留米総合(東京A)に4-2の勝利。筑陽学園(福岡)と対戦する2回戦へと見事に駒を進めた。

 昨年度に0-6、一昨年度に0-5と、いずれも選手権1回戦で青森山田に大敗していた草津東にとって、この初戦はいわば鬼門だった。しかも、スタジアムを覆ったのは完全アウェーという雰囲気。選手たちが平常心を失いかねない条件が揃っていた。しかし、牛場哲郎監督が「飛ばしていこう」と発破をかけていたチームは立ち上がりから躍動する。
 
 4分、エースのFW渡邉颯太(3年)が幸先よく先制点を挙げると、指揮官が全幅の信頼を寄せるMF小酒井新大(3年)のゲームメイクや、MF遠座隆太(3年)の突破を活かした攻撃で主導権を掌握。9分にキャプテンのCB下田将太郎(3年)が負傷交代するアクシデントに見舞われた東久留米総合を押し込んでいく。すると19分、CKから追加点をゲット。31分には渡邉の右足弾でリードを3点に広げ、非の打ち所のない内容で前半を折り返した。
 
 だが、好事魔多し。運動量が低下した草津東は後半、よもやの劣勢に立たされる。「プレースピードを上げてきた」(渡邉)東久留米総合の攻勢を受け、64分までに2ゴールを返されてしまうのだ。得点差はわずかに1。東京代表校のサポーターが数多く駆け付けたスタジアムのボルテージは最高潮に。草津東イレブンは文字通りの窮地に直面した。
 
 この苦しい時間帯に気を吐いたのが守備の要であるGK長澤輝(3年)だった。最後の砦として東久留米総合の前に立ちはだかっただけでなく、一度掴んだボールをすぐに展開せずに、ゆっくりと時間をかけてからキックするなど、クレバーな状況判断が光った。一方で、牛場監督が講じた後半73分の二枚替えも奏功し、東久留米総合に同点弾を許さない。
 
 そして80分、耐えに耐えていた草津東に待望の4点目が生まれる。ロングボールに反応した小酒井がゴール前で「イメージ通り」に相手をかわしてから右足を振り抜き、ふたたびリードを2点に広げたのだ。まさに雲外蒼天。過去2大会で味わった悔しさから這い上がり、この一戦で訪れた困難も乗り越えた草津東が蒼天をあおいだ瞬間だった。
 

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