リバプールの指揮官ユルゲン・クロップはいかなる人物か。“人心掌握術”から予想される南野の起用法は?【現地発】

2020年01月01日 松澤浩三

特筆すべき「マン・マネジメント」

現地時間12月31日にチームに合流した南野(左)の手をガッチリと掴むクロップ(右)。その柔らかな表情にも人柄が溢れている。 (C) Getty Images

 現地時間12月26日に行なわれたレスター・シティ戦。74分にこの日2点目を決めたロベルト・フィルミーノが一目散に向かった先には、ユルゲン・クロップ監督の姿があった。

 大柄な熱血漢は、試合後の記者会見で、「ボビー(フィルミーノの愛称)は『ありがとう』の意味を込めてハグをしに来てくれた」と、28歳のブラジル代表FWからの力のこもったハグの理由を明かした。

 今月行なわれたクラブワールドカップの2試合では、ともに試合終盤の大事な場面で決勝点を挙げて存在感を示したフィルミーノだが、それ以前の16戦では1ゴールのみ。自身の得点力不足を危惧していた。

 4-0で大勝したレスター戦後、クロップは、「ボビー自身は、しばらくゴールを決めていないことを少し心配していたようだ」と明かし、こう続けた。

「ボビーについては、ゴールではなく、チームにとって重要な選手かどうかを考える。だから本人ともその話をして、私がそんな数字に興味はないことを伝えた」

 エースナンバーの9番を背負い、3トップの中心で起用されているが、実際の役割は攻撃にアクセントをつけるセカンドストライカーもしくは攻撃的MFだ。だからこそ、指揮官も「ボビーはチームのコネクター」と形容するのである。

 クロップはさらに、「彼はチームに欠かせない大事な存在だ。あのポジションでプレーできるのは彼だけで、あのポジションを特別な形でプレーしている」と絶賛した。

 期待に応え、しっかりと結果を出したフィルミーノの奮闘はもちろんだが、特筆すべきは、その力を引き出したクロップの「マン・マネジメント」の質だろう。

 もちろん、モチベーターとして能力の高さを示してきたのは、今回だけではない。例えば今年4月に行なわれたポルトとのチャンピオンズ・リーグの準々決勝、ホームでの第1レグで圧巻のパフォーマンスを見せた主将のジョーダン・ヘンダーソンを褒めちぎると同時に、謝罪の言葉も口にしていた。

「ヘンド(ヘンダーソンの愛称)は素晴らしい選手だ。彼が攻撃的な能力の高さを再び見せてくれて嬉しい。彼があの(8番の)ポジションを好んでいるのは明白だ。

 過去1年半にわたり、ヘンドを6番で起用し続けたのは私の過ちだった。だから謝るよ! しかし(ほかに選手がいないから)あそこで起用するしかなかったんだ」

 これには伏線があった。昨シーズン途中まで、中盤のアンカーポジションを任されていたヘンダーソンは、自分の実力を最大限発揮できていないと感じていた。そして、後半戦になって、自身が力を発揮できるのは6番のポジションではなく、より高い位置でのプレーであるとクロップに直訴していたのだ。

 そのため、ファビーニョやナビ・ケイタがチームにフィットしてきたシーズン終盤戦は、ヘンダーソンを「ボックス・トゥ・ボックス」の8番のポジションで起用できる機会が増え、その結果、先述のポルト戦のような本人も納得のパフォーマンスを見せるようになった。

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