【高校選手権】前橋育英 1-0 初芝橋本|絶体絶命のピンチを救った大黒柱・鈴木徳真の存在感

2015年01月02日 安藤隆人

終盤に訪れた大ピンチを抜群の危機察知力で回避。

終盤のピンチを凌ぎ勝利に貢献した鈴木。チームの大黒柱が、さすがの存在感を見せた。(C) SOCCER DIGEST

 優勝候補・前橋育英のエースナンバー14を背負い、キャプテンマークを巻く鈴木徳真は、チームの絶対的な支柱だ。今大会の注目選手のひとりである鈴木を擁する前橋育英は、初戦から苦しい戦いを強いられた。
 
 初戦の相手は難敵・初芝橋本。アタッカー陣に個性的な選手を揃える相手だけに、守備の要である鈴木への負担は大きくなると予想された。案の定、初芝橋本の前への圧力はすさまじく、鈴木は常に周りの状況を見ながら、自分の役割を受け入れていた。
「とにかく今日はリスクマネジメントを徹底してやろうと思った」。
 
 相手の攻撃の芽を摘むべく、中盤の底で積極的に動き、球際で身体を張った。だが、「相手の起点は14番。必ず彼を経由するので、そこを徹底して奪いに行こうとした」と敵将・阪中義博監督が語ったように、鈴木がボールを持った瞬間に、複数人で囲い込み、容赦なくプレスを掛けてきた。
 
 これにより、ボールを奪ってから正確なパスで展開する、鈴木らしさは影を潜め、ボールを奪っては囲まれ、また奪っては囲まれと、苦しい状況が続いた。
 
 思うようなプレーはできなかった。しかし、1-0で迎えた後半33分、チームを救うビッグプレーをさらっとやってのけた。初芝橋本のMF末吉塁がドリブル突破を図る。次の瞬間、「シュートを打たれると思った。ゴール前にボールがこぼれたら危ないと思った」と、鈴木はゴール前に向かってスピードを上げた。そして末吉のシュートを、GK吉田舜が弾くが、弾いた先にはFW市川久也が待ち構えていた。GK吉田は倒れたまま、ゴールはがら空き……。
 
 絶対絶命のシーンだったが、市川がシュート態勢に入ろうとした次の瞬間、後方から鈴木が猛然と走り込んできて、ボールをかっさらった。しかも、ただ蹴り出すのではなく、見事なファーストタッチでコントロールして、そのままドリブルで攻め上がっていった。
「正直、『危ない』と思ってから覚えていません。身体が勝手に動いて、ボールを持っていました」
 
 このコメントこそがすべてを言い表わしている。ピンチを感じ取ると、直感的に身体が動く。それこそが鈴木が持つ天性の才能だ。高度な危機察知能力と、察知してからの無駄のないスムーズな動き。すべての流れがスーパーだった。
 
 このビッグプレーもあり、チームは苦しみながらも1-0の勝利。絶体絶命の窮地を救った鈴木の存在は、やはりチームの象徴であった。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
 
■試合の結果
前橋育英 1-0 初芝橋本
得点者/前=宮本(後半25分)

【高校サッカー選手権Photo】1月2日|2回戦


 
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