高校世代No.1アタッカーの早すぎる終幕…多くの成功と挫折を味わった桐光学園のエース、西川潤が最後に見せた涙

2019年11月30日 松尾祐希

ピッチやロッカールームでは涙ひとつ見せなかった男は囲み取材に応じると…

最後の選手権は全国の舞台に届かなかった。西川の高校サッカーが幕を閉じた。写真:滝川敏之

 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、10番は視線を落とした。左上に巻かれたキャプテンマーク。それを外すと、憂いに満ちた表情で悔しさを噛み締めた。

 仲間の前では絶対に泣かない――。


 今までもそうだった。しかし……。ピッチやロッカールームで涙ひとつ見せなかった男は囲み取材に応じると、堪えていた感情が溢れ出した。

 西川潤(3年)の高校サッカー生活は、本人が描いていたであろうエンディングとは異なる形で、早すぎる終幕となった。11月30日に迎えた神奈川県予選の決勝。桐光学園は日大藤沢に0−1で敗れた。

「自分が決める場面で決めていれば、違ったかもしれない。いろんな想いがあった中でチームを勝たせられず、役目を果たせなかったことが悔しい」

 前半、西川は幾つかのチャンスを決め切れなかった。8分にゴール前で左足を振り抜いたが、枠を捉えられない。19分には右サイドを突破した前川壮太(3年)のクロスに頭で合わせたが、GKに阻まれてしまう。24分にもゴール前で好機を得たが、またしてもフイにした。

 後半は相手の堅守に手を焼き、良い形でボールをもらえない。後半は16分に放ったシュート1本のみ。10番の仕事は果たせず、タイムアップを迎えた。

 思い返せば、西川は高校の3年間で多くの成功と挫折を味わった。

 2年生の夏にインターハイで準優勝を果たすと、今夏はそのインターハイでついに日本一に輝いた。代表レベルでは昨秋のU-16アジア選手権でチームの優勝を決める決勝弾を奪い、大会MVPを受賞。今秋のU-17ワールドカップでは目覚めしい活躍を見せ、高校世代No1のアタッカーであることを証明した。特にオランダとの初戦では1ゴール・2アシストの大暴れ。プロの世界で戦う自信を手にし、現地でも高く評価されたのは記憶に新しい。

 一方で西川は、横浜F・マリノスユースへの昇格を断り、桐光学園に進学する道を選んだ。期待値も大きく、入学式の前から中村俊輔(現・横浜FC)も付けた10番を背負ったが、1年次は思うように結果を残せず、一度も全国の舞台を踏めずに終わっている。

 2年の夏には、前述の通りインターハイで目を見張るパフォーマンスを見せ続け準優勝という結果を残すのだが、迎えた山梨学院とのファイナル。1−0でリードしている後半アディショナルタイムに自らのシュートミスをきっかけに同点弾を決められ、延長戦で涙を飲むという悔しい経験もした。

 昨冬の選手権は初戦で大津に0−5の大敗。2019年2月にセレッソ大阪への入団が内定し、飛び級で挑んだ今年5月のU-20ワールドカップでもノーゴールと結果を残せなかった。
 

次ページ何度もスポットライトを浴びたが、その分だけ鼻をへし折られてきた

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